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朝、いつものように茄治より早く起きて弁当と朝ごはんを作る。
食卓に並べている時に茄治はちょうど起きてきた。俺なんていつも朝無理矢理起きてんのに寝起きいいなと思った。
そういえば、聞かなきゃいけないことがあったんだと思い出した。
「俺の通帳って見たことない?」
「通帳?」
「母さんが残してくれてたんだって。茄治の家に引っ越すときにどっかわかんなくなって」
「母さん?」
茄治は訝しげな顔をした。説明してなかった。
「あ、この前来たんだ。店に」
「マジで?」
母の話をしたら驚くのは仕方ない。俺だって驚いたんだし。
「なんか見たことあるかも」
と茄治が言い出した。
「え?」
「なんかあいつら話してた」
茄治が言うには、暗証番号がわからないとか話してたのを聞いたらしい。
やっぱりと思った。もしかしたら他の親戚が持って行ったか、捨てられた可能性もあると思ったけど。
「まさかそれもかよ」
茄治はうんざりした顔をする。
「茄治の家に電話したんだ」
「え?」
「今日、学校終わったら会う約束してるから」
「兄さん?」
「茄治も一緒に」
茄治は顔を歪めた。
「勝手に。何それ」
「だって聞く耳持たなそうだし、通帳のこと言ったら交渉有利に運べるかも」
「交渉?」
「茄治の一日をもらう交渉」
「なんかそれ」
茄治が照れたような顔をしたので、俺も止まらなくなった。つい抱きしめてしまう。
「このままじゃ学校行けない」
「茄治!」
「どうすんの。もう」
仕方ないから口で抜いてあげた。
「兄さんは?」
「俺はいいって」
「1週間だよ?」
「後で会えるじゃん」
「それ違うじゃん」
まあそうなんだけど。
「あと、今度付き合ってほしいとこが」
「ん?」
「後で話す」
茄治に弁当を持たせて見送った。
今日は仕事を休みにして、茄治の家に行くことにした。
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