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 久しぶりの高校は、やっぱり変わってなくて、まだ1年も経ってないのに懐かしく感じた。  茄治が何組かなんて知らないし、校門付近で待ってた。 「あれ、谷村君のお兄さん?」  見たことがある女子だった。  前に茄治と消えた子だ。 「茄治まだいる?」 「うん。ってえーと」  俺の方をまじまと見てくるので、何かと思った。 「眼鏡してないんですね」  俺は笑った。 「あれ伊達だから」 「え?」  理由は内緒だけど。 「浮気現場発見」  茄治がふざけて言った。 「浮気って」  何もしてないし。 「谷村君?」 「何? 兄さんになんか用?」  相変わらずそっけない。茄治は間違いなくモテるのに。 「眼鏡してないから」  茄治はちょっと嫌な顔をした。 「あ、だからやなんだよ。色目使うなって言ってんのに」 「使ってないって」  そう言っても聞いてないみたいに女子に向かって茄治は言う。 「ねえ、知ってた?」 「え?」 「眼鏡かけろって言ったの俺だから」 「谷村君?」 「兄さんは俺のもんだから」  こ、こんなところで何やって。キスをされた。女子が見てんのに。  女子の方を向くと赤面して、去って行く。 「何やってんだよ」 「別にいいじゃん」  恥ずかしいのに。 「今日はそういうの」  やめるつもりだったのに。  「我慢できなくなっちゃった?」 「茄治!」  茄治は笑う。  本当はうれしかった。隠さないで言ってくれたから。 「兄さん?」 「大丈夫。行こう」  ここから茄治の家は徒歩30分ほど。バスも出てる。歩いても良かったけど、バスに乗った。  家の前でため息をつく。見慣れた家なのに、緊張する。 「兄さん?」 「久しぶりだからさ」  そう言って茄治と一緒に家に入った。

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