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母さんは手を振って去って行った。俺はちょっと拍子抜けする。
「ねえ、気付かれてたんじゃ」
「え?」
「俺たちの関係」
茄治が突然そんなことを言い出して、驚いた。
「兄さんはすぐ顔に出るから」
「うるさいな」
からかわれるのが気に入らなくて、ついそんな風に答えてしまう。
「別に大丈夫だと思うけど」
と茄治は言うが、俺は急に恥ずかしくなって、顔が火照ってきた。確かに母さんの様子変だった気がする。
「えー。もう。次どんな顔で会ったらいいんだよ」
マジで困る。そもそも何で母さんは男同士とか抵抗ないんだ。
「ま、別にいいじゃん」
良くないって。
「そんなことより、早く帰ろう」
と言ってキスをしてきた。こんなとこですんなって思ったけど。
俺のわがままで茄治の時間を奪ってしまったから仕方ないと思った。
家に帰って夕飯食べるのも億劫になるくらい、抱き合った。
「でも、良かったじゃん」
茄治が言うには、俺が捨てられたわけじゃなくてということらしい。
そんな話を茄治にした覚えもないけど。
「そういうこと考えてそう」
なんて言われた。確かに否定できない。
母さんが言ってたことを思い出した。茄治は俺のことをちゃんとわかってくれてるって。
そんなこと今まで考えたことなかった。ただ好きで、抱き合って、一緒にいたかった。
そもそも俺たちの関係は一体なんなのか。お互い好き合っているというだけで、付き合うとかそんなこと決めた覚えもない。茄治が高校卒業したら答えが出るんだろうか。
そしたら一緒に暮らそうって言いたかったけど、まだ言えていない。
「お母さんきれいだったね」
そりゃ、ホステスしてた時すごい人気だったらしいから。
「兄さんの方がきれいだけど」
「は?」
母さんの方がきれいに決まってる。女だし、今はちょっと歳取ったかもしれないけど、昔はもっときれいだった。
「そんなわけないって。茄治は昔の母さんを知らないから」
「主観的な問題かもしれないけど」
茄治は言い直した。
「俺にとっては兄さんがずっと一番きれい」
急にそんなことを言われて、恥ずかしくなった。
「何言って」
「もっとめちゃくちゃにしたくなる」
唇に唇を押し付けられ、ついでに押し倒された。
舌を絡ませて、唾液を垂らし、吸い付いてくるような唇に、俺の口の中もぐちょぐちょにされる。
キスだけでやばい。体に力が入らなくなるくらい。
唇が離れたところで
「いいよっ」
って答えたら、茄治は極上の笑顔で笑った。
いつでも茄治の指や唇や、舌やペニスでも俺をめちゃくちゃにしてほしい。他には何もいらない。
あまり遅くなると駄目だけど、毎週日曜日は2人だけの時間。
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