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運命なのかは後にして②

あの後、下半身の違和感で身動きが取れなかった俺を土師が「俺のせいですから」と言って世話を焼いてくれたが、流石にこれ以上はと思いながら一週間が過ぎた。 突然、彼女に振られ家無しに。酔っ払って会社の部下に拾われ、ヤられた相手に世話になってる意味不明の三十四歳独身……中條拓巳(なかじょうたくや)。 俺が最低なのか、不幸なのか分からなくなってきた。 「先輩」 「ひぁっ!」突然、尻を掴まれて変な声が出た俺は慌てて口を手で塞いた。 「……土師(はぜ)、会社ではそうゆーの止めろって!」 「目の前に形のいい尻があったらこうしますでしょ」 俺は、顔の表現を変えずに下衆な事を平気で言う土師を睨んで、尻を掴んでいる手を叩いた。 「痛っ」 土師とああなってから絡みが増えた。あんまり喋らない奴と思っていたけれど、よく観察すれば同僚や上司と普通に会話していて、俺が思ってた印象とは違っていた。 「それ今日使う資料ですか?」 「ああ、そうだよ」 「言ってくれれば俺がやったのに」 「コピーくらい自分でするし、おまえは自分の仕事で忙しいだろう。初めて任せてもらったんだそっち優先しろよ」 「勿論、頑張りますよ。それには先輩不足なんでちょっと充電しに」 土師が後ろから俺を抱き締めた。会社で隙あれば触れてくる土師をどう扱っていいか正直分からないでいる。 最初の内は抵抗していたが、こうも続くと面倒でどうでもいいというか慣れたというか、これ以上してこないから別にいいかなんて思ってしまっているのも事実だ。 「だからこういうのは」 「じゃ家ならいいですか?」 「……考えとく」 「……嘘ですよね?」 土師の腕が俺を解放した。土師がどんな顔をしているのか長めの前髪と眼鏡で見えなかった。 「じゃ、俺行きます」 「ああ…うん」 俺は、土師が出てった資料室のドアを見た。 じゃ、どう応えたら良かったんだ? 「わっかんねぇ……」 俺は、愛される歯痒さに溜め息を吐きコピー機の前で項垂れた。

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