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運命なのかは後にして④
あの後、ずっと土師の事が気になって一睡も出来なかった。今頃になって睡魔が襲って来た。
ああ、眠い……
翌朝、眠気覚ましに備え付けのインスタントコーヒーをティーカップに入れ熱湯を注いだ。テレビでは、朝の決まったニュースに続き今日の天気予報が表示されていた。
「また雪か……やばっ! もうこんな時間」
俺は、鞄と荷物を持ってホテルを出た。空は本当に雪なんて降るのかってくらい快晴だった。
「寒っ! ああ、急がねぇと」
俺は、青信号の横断歩道を渡り会社へ向かった。自動ドアを走り抜け、社内のエントランスでエレベーターに乗ったところで誰かが入ってきた。
「おはようございます」
「土師……おはよう」
「今日はコートなんですね」
普段、会社指定の作業着を上着代わりに着てるしってそんな珍しくないだろう。ホテルに泊まるのに作業着じゃまずいからとは、昨夜の一件を蒸し返すようで言えなかった。
「あ…ああ、今日は得意先に何件か呼ばれてるんだ」
「そうなんですか」
なんだ普通じゃないか気にしたのに……
「……あの」
「へぇ?」
俺は、うなじ辺りに気配を感じて振り返った。
「え? なに?」土師は、俺の首根辺りに手を伸ばした。
「クリーニングのタグが付いてます。ほら」
「あ…本当だ。サンキュー……」
耳元の近くで土師が「そんなに警戒しなくてもなにもしませんよ」
ドキッ……んん??
エレベーターのドアが開いて先に土師が先に出ていった。俺は、熱くなった左耳を押さえ暫く動けなかった。
なに意識してんだ俺は……
「クソっなんなんだよ」
エレベーターのドアが閉まりそうになって慌てて降りた。
自分用のデスクから必要書類を鞄に入れ、俺は会社近くの大通りでタクシーに乗り得意先へと向かった。
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