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運命なのかは後にして⑤
はぁ……やっと終わった……
俺は、三件目の得意先からタクシーに乗った。もうすっかり外は暗くなっていて、朝より冷え込みがキツくなっていた。
コートのポケットでスマホが振動していのに気付き画面を見た。
「はい、中條 です」
なんだか騒がしいな……
『……ああ、中條? そっちはもう終わりか?』
「はい、このまま直帰しようかと」
『じゃおまえも来いよ。土師の初リーダー今日で納期終了だからさぁ皆で飲みに行こうかってなってな〜〜おまえも褒めてやれ!』
騒がしいと思ったら、島野 部長これは酔ってるな……
「今から行きます…いつものとこですね」
最寄り駅までタクシーで、そこから電車に乗り換え三十分。会社近くの居酒屋へ向かった。案内された座敷の引き戸を開けた。案の定、島野部長は泥酔、その他の連中も程よく出来上がっていた。
「あっ、中條さ~んこっちこっち!」
熱血キャリアウーマンでうちの社で一、二を争う美人の仁科 さんも来てたのか……珍しい……あいつ皆に愛されてんな……
「で、主役の土師 は?」
「土師くんならあっち」
え? あいつも酔ってんのか?
「土師」
「ああ! 中條先~~輩。俺頑張りましたよ酒注いでくださーい」
なんだ…こいつ酒弱かったのか?
「おまえもう止めとけって」
「いいから座って酒注いで!」
土師がビール瓶を俺に渡してきた。俺は、仕方なしに土師が持つグラスにビールを注いだ。それを土師は一気に飲み干した。
「もう一回……」
土師と同期の斉藤 さんが「土師くんって酔ったら可愛いのね~~」
土師の後輩の遠藤 は「あんな土師先輩見たことないっす」俺と土師のやり取りを周りが楽しそうに見ていた。
確かに、土師がこんなに泥酔してるの始めてた見る。
「土師…俺が送ってってやるからもう止めな」
「……中條…先輩…ふぇ…」
え?! 泣いてる?! 面倒くせぇ……
「あっ! 中條先輩泣かしたぁぁ!」酔うとさらにヘラヘラする遠藤の頭を軽く叩いた。
「うるせぇな…遠藤。俺の仕事やらせるぞ」
「うへ、中條先輩それは勘弁っす!」
それを見ていた周囲が、面白がってヤジが飛び交い収集付かない。まともなのは、世田さんくらいた。
「世田 先輩、土師連れて帰ります」
「……土師くん相当酔ってんな〜〜じゃ、中條頼むわ」
いや、見えただけで世田さんも相当酔ってる……目が怖い……
「おい、土師帰るぞ。しっかり立て」
俺は、泥酔状態の土師を担いで表通りに出た。タクシーの後部座席に、土師を押し込んで隣に俺も乗った。行き先を運転手に告げるとタクシーは目的地へと走り出した。
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