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運命なのかは後にして⑧
チェックインを済ませた土師 とエレベーターへ向かった。雪に慣れていない俺は、寒さと冷えにやられて震え上がっていた。
「大丈夫ですか?」
「だ…大丈夫じゃねぇよ…部屋の鍵は?」
「え?」
「俺の部屋の鍵」
「えっと…満室で一部屋しか取れなかったんで」
「はぁ? それを先言えって」
「……すみません」
本当そう思ってんのか顔の表情が変わらない土師を見てため息を吐いた。
「まぁ…しゃーない。行くぞ」
俺達は、エレベーターに乗って目的の階へ____
「どうぞ」部屋の鍵を開けた土師が俺を促した。
「……サンキュー」
部屋は意外と広かった。二人掛けソファと小さなテーブルが一つに中央にセミダブルベッド____
……ん?
「ベッド一つしかないとか聞いてない!」
「聞かなかったからいいのかと…取り敢えず風呂入って下さい。風邪引きますよ」
「おまえな…はぁ……ああ、そうする」
確信犯ですか!
俺は、バスルームに入りドアを閉めた。カランを捻り頭から湯を浴びる。極度に冷えた足先と手先が妙に熱い。全身に熱い湯が滴り下に落ちていく。手が震えているのは寒さのせいなのか……状況が状況なだけにああ言ったが、本当にそれで良かったのかと今更ながら考え始めた。
「でも…今更…な」
自分の身の危険を感じようが、もう一度そうなってんだ。元はと言え、俺が泥酔してなければ土師に迷惑掛けることも、こんな気持ち知らなくて済んだんだ____
……ん? 気持ちってなんだ?
「いやいや…ないって」
備え付けのバスローブを適当に着て、バスルームから出た。
「ああ〜生き返ったぁぁ土師も入れよ」
スマホを見ていた土師は、椅子から立ち上がってこちらを見た。一瞬、動きが止まった土師は、手に持っていたスマホを落として慌てて拾った。
「……土師? 何やってんの? さては、俺の風呂上がりがそんなに魅力的? やだ、本当男ってやらしいぃ」
自分でやっといてなんだが… キモいわ……余計、シラけた感じになったじゃねぇか!
「い…やだんだ…おまえも早く入れよ」
「別に……おっさんの身体でも…だから、無自覚は……っ」
「今、舌打ちした?! おっさんとはなんだ! 失礼な…おい! 聞いてるのか! 土師! 土師!」
「・・・」
無表情の土師は、俺を無視してさっさとバスルームへ入っていった。
「そのおっさんの身体を無茶苦茶にしたのはどこの誰だよ……ったく、まぁ…あんま覚えねぇけど」
そんな相手と同室とか俺って相当…阿保ぅだけどな……
俺は、濡れた髪を拭きながらベッドに身体を預けた。
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