土師(はぜ)へメッセージを送った返事はなく、既読さえなっていなかった。そんな俺の色恋沙汰など、お構いなしに日常は繰り返す訳で＿＿＿＿ 　はぁ……まだ怒ってんのかあいつ…… 「へ…へっくしゅん…ああ、ぐすっ」 週末あのまま寝落ちしたのが原因か、朝からくしゃみが止まらない。 　この寒い季節に暖房もつけず、薄着で寝てりゃ風邪引くだろう。今日は、定時で上がってとっとと帰ろうなんて、考えながらスケジュールボードを眺めた。 　え……十一時、〇〇食品(株) 土師付き添い？ そういやあいつ島野部長がどうのとか言ってたっけか…… 　気まずい…… 「中條主任…そろそろ出ますか？」 　 　社内で肩書き呼びする社員は滅多にいない。部長から上の肩書きから呼ぶというちょっと変わった社風らしく、〇〇さんって呼ぶのもなんだってことで〇〇先輩と呼ぶようになったとか……ならないとか…… そこを今、強調してくるとか意味深でしかない。土師の表情はいつも通り無表情だった。 　さっぱり分からん…… 「……そうだな」 「・・・」 「なんだよ？」 「いえ、徒歩圏内なんで」 「〇〇食品ってあの大通りの？」 「はい、島野部長に、おまえに任すから主任連れて行ってこいと言われました」 島野部長に？ なんか最近、俺達見てニヤニヤするんだよな……あの人。五十代には見えないイケてるオヤジというイケオジだ。 　だか、ちょっと癖モノなんだな…いい意味で。 「試されてるね……」 「え……？」 「なんでもない。行くぞ」 「はい」