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運命なのかは後にして⑰

 土師(はぜ)と共に会社を出て大通りへ、〇〇食品(株)まで徒歩十分、大通りに面した十五階建てのビルだ。  ビル内は今風ではないが、食品会社ならではの清潔感が伝わってくる。俺達はエレベーターに乗り七階へ向かった。 「へっしゅんっああ……」 俺は、ここへ来る道中でもくしゃみ連発で、なんだか朝より悪化してる気がする。取り敢えず、今しがた飲んだ風邪薬が効いてくれさえすれば、なんとかなるだろうと思っていたが…… 「これよかったら」土師が使い捨てマスクを俺に差し出した。 「……助かる」俺は、それを受け取り包装のビニール袋からマスクを出した。 「大丈夫ですか?」 「いや、すまんなこんなんで」 「なんか…ずっと謝ってばっかだ」 「え…いや、ごめん…そうだっけ?」   気まずっ!! 「降りますよ」 「あ、ああ……」  エレベーターを降り土師が、商品開発部の扉を開いて、対応に出て来た白衣姿の若い女性と土師が話しているのを遠巻きに見ていた。土師は、終始笑顔で話し、女性はそれに対して好意的な笑顔で土師を見ていた。  あいつ、イケメンだしなモテるだろうに…なんでおっさんの俺なんだろう……つーか最近、俺にはあんな笑顔したことねぇ……:胡散臭い笑顔はよくするが…… 「……主任?中條(なかじょう)主任」 「あっすみません」 「こちら、山野(やまの)さんです」 「山野です」見た目のふんわりとした印象と違って、落ち着いた声でそう言い名刺を俺に差し出した。俺は、両手で受け取りこちらも名刺を差し出して「中條です」と応えた。 「機械に詳しい社員に見てもらったんですが、原因が分からないようで」  製造機が十年以上前か……俺が入社してるかしてないかくらいの製品。物持ちが良いのは、商品が優良なのは勿論だか、使い手が適切にメンテナンスを行なっていたからだろう。そうはいっても機械は消耗品。常にハイペースで進化している。 「では、原因を調べますね」土師が山野に言った。「お願いします」山野は、軽く会釈をしここから立ち去った。 「中條主任これ」 部長から渡された資料を土師が俺に渡した。そこには、中條と土師のコンビならなんとかなるだろうとメモ書きしてあった。 「なるほど…試されてるね」 「何がです?」 「俺らのここを」俺は、自分の腕を軽く叩いてみせた。 「……なんか古臭い」俺のジェスチャーを土師がダメ出してくる。 「うっせぇ…な…それよりこれ、かなりの大モノや覚悟せーってこと」  無表情の土師が頷き作業に取り掛かった。俺は、ノートパソコンを睨み苦戦中の土師を見守りながら、機械の破損箇所を確認しクリーニングを行った。 「あっ、主任これ……」作業に取り掛かって二時間程経過したところで土師に呼ばれノートパソコンを覗いた。 「なんだ…これ、島野(しまの)部長に聞いてみるか」  俺は、スマホを取り出して島野部長の番号をタップした。 『おお、中條…意外に早かったね。土師くん俺のお茶目な悪戯に辿り着いちゃった?』  おっさんがお茶目ってなんだよ! 「……そうみたいですね。で、どうするんですか?これ」 『それね、そこの商品開発部の 佐々木(ささき)がいたら聞いてみてくれないかな?』  タチ悪っ!さんって人気の毒だな…… 「分かりました」と言って通話を切った。 「土師、佐々木さんて人知ってるか?」 「佐々木さんでしたら商品開発(ここ)の部長ですよ」 「え?!」 「俺、確認してきます」 「おお、頼んだ」

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