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運命なのかは後にして⑲
「おっやるじゃん」俺が土師 に拳を突き出すと、それに拳を軽く打つけて土師が「先輩がいたからですよ」と言った。
なんだよ…急に素直になっちゃって……
「……ほっほら、撤収!」
なんだか無性に恥ずかしくなって、顔が熱いのはマスクのせいだと思うことにした。俺が手早く片付け、土師が佐々木に報告し商品開発部を出ようとした時だった。
「あれ……もしかして土師……?」
「……小賀 ……先輩」
「おお、久しぶりじゃねぇ?」
土師がこちらを見た気がした。一瞬過ぎてそれがなんなのか俺には分からなかった。
二人は、随分久しぶりなのか話が盛り上がっていた。
小賀という男は、俺より年下なのは見て分かった。身長は、土師より低いが俺より高く、少し長めの前髪を無動作に後に流して、濃紺のスーツを着ていた。男に対して失礼なのかもしれないが、綺麗な人という印象だった。
「すみません、話し込んじゃって…小賀です」
「中條です」
小賀が何かを思い付いたのか手を叩いて俺と土師を見た。
「お二人、昼食まだてますよね?」
俺と土師は顔を見合わせ、急な展開に返答に困ったが「はい」と応えた。
「じゃぁ、うちの社食食っていって下さいよ!」
小賀の人懐っこさはなんなのか、半ば強引に案内され社員食堂へ。
「うちの社食は、品質とより良いサービス向上の為に商品や試作段階のモノを無料で提供してるんです」
「へぇ……」
社員食堂というより洒落たカフェみたいだ。うちには、社員食堂はなくコンビニが店舗で入ってるくらいだ。小賀が自慢したくなるのも分かる。
「トレイに食べたい副菜、主菜を取っていくスタイルなんで好きなもん見て下さい」
小賀にトレイを渡され受け取った。俺は、体調のせいか食欲があまりないとは言えず、食べれそうな麺類の中から卵あんかけうどんを選んだ。コンビニで見かけるレンジアップタイプだった。それと、ゆかりのおにぎりを取った。
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