21 / 51
運命なのかは後にして⑳
「中條さんこっちです」
四人掛けのテーブルに座っていた小賀が俺に声を掛けてきた。
「凄いですね…社食じゃないみたいだ」
「でしょ! 商品開発部と企画部が力入れてますからね。食品会社なんで料理好きが結構いて…俺は、もっぱら食べる側ですけど」
だろうな……
小賀の容姿から想像出来ないくらいの大盛りカレーライスを、スプーンで掬い口いっぱい頬張った。俺は、小賀の男前な食いっぷりを見ながら丼の蓋を開けうどんを啜った。
「……旨っ」
「コンビニで展開してる食品も今じゃ本格的になってるんですよ」
「このタイプは食べたことなかった…こんなこといっていいのか…所詮、コンビニってイメージがあったんで」
「技術の進化ってやつです…そう考えると人って贅沢ですよね」
「なるほど……確かに。ところで…土師は?」小賀の隣の席に置いてあるカレーライスがさっきから気になっていた。
「ああ、土師なら電話中ですよ…つーか、中條さんと土師って付き合ってます?」
え____?
俺は、小賀からナチュラルに出た突拍子もない言葉を聞いてうどんを吹き出した。
「大丈夫ですか?」
「ゴッホッ…ゴッホっ! あっ大丈…夫」
「その様子だと…あいつにゴリ押しされて絆されたみたいな?」
「いや、えっとなんだ」
「大丈夫…俺…土師と一緒ですから」
一緒? この人も土師と同じゲイってことか?
「貴方を見る土師で分かった」
あの無表情から何が分かるんだ……
「大学の頃からの知り合いですけど、俺から声掛けて同じだって知って」
小賀さん、もしかして……
小賀は、何かを察したのか笑みを浮かべ「幾ら同じでもお互いの好みがある…土師は、もっぱら普通の男が好み。痛い目みてもそこは変わらないんだなって」
土師を好きとか?
「……中條さん、俺が口出しする事じゃないけど…男女関係なく傷付くし、俺等も同じなんです。今は良くても、これから色んなリスクの壁がある。片方だけの想いじゃダメ…それをもう一度よく考えてみた方がいい」
それは…俺がゲイじゃないからってことか?
「すみません。遅くなって」
「土師、遅いぞ…上司待たせるな」
「小賀先輩は、俺の上司じゃない」
「ちょっと! 久しぶりに会ったのに…俺に対して酷くねぇー?」
「普通でしょう。それより、中條…先輩……主任? どうかしました?」
ややこしなら主任ゆーな!
「……いや、早く食べろ。冷めちまうぞ」
俺は、既に冷めてるだろう小賀と同じカレーライスを土師に進め、物言いたげな土師の視線を見ないよう食べるのに集中した。
なんなんだよ…この疎外感……
俺が普通の男 だからダメってことか……? じゃ、土師に対するこの気持ちはなんなんだ____
ともだちにシェアしよう!