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運命なのかは後にして㉜

 俺等は、予定通り定時で仕事を終わらせいつもの居酒屋へ来ていた。  この店のこれが旨いだの、この酒が旨いだの仕事の話し…そして酒がいい感じに回った時、互いの間に心地良い沈黙が流れた。 「俺さ…最近、眠れてないんだわ」 「ああ…だから◯ガシャキ」 「そう…◯ガシャキ…なんかさ、志之(し の)が会いたいって言ってるって…あっ志之は俺の父親ね。よく間違われるだよ女に…紛らわし名前だ」 「会いにいかないんですか?」 「正直、今更って感じで…それに病気らしい…もう長くないって」 「会いに行った方がいいと思いますよ」 「……勝手過ぎんだろう。大体、おまえに俺の気持ちが分かんのかよ」 「そうですね。俺には分からないです…両親事故で亡くしてますから」 「……ごめん…俺また」  土師(は ぜ)は、ゆっくり首を横に振って無言のままハイボールを飲んだ。 「……会って文句の一つや二つ言ってやればいいんじゃないですか?」 「おまえ結構…強いな」 「そうですか? まぁ俺には妹がいるし、その分助かっていたのかもしれない。それに、言いたくても…もう言えませんから……」 俺がグラスを持ち上げ、傾けると中の氷が音を立てた。また、沈黙が流れる。 「あれ? 土師に中條さん?」  いい感じの沈黙をぶち破ったのは小賀(こ が)だった。その隣には同期の滝川(たきがわ)も一緒だ。  あの時の醜態を思い出し、俺は小賀と滝川に謝罪した。 「いやいや…あれはこいつが悪いんで」 「そうそう俺が悪い…なんならまたご一緒しません?」と小賀が俺と土師を交互に見る。 「いいんですか?」俺はノリノリで立ち上がった。 「先輩飲み過ぎたないで下さいよ」横で土師が睨んた。 「分かってるって」  よく分からない四人が飲んで食って、滝川は営業らしく話しは上手いし、小賀も元営業だったらしく話しは尽きない。 「俺…ちょっとトイレ行ってくる」 「先輩…大丈夫ですか?」 「大丈夫…おまえは俺のおかんですか」 俺は、ちょっと覚束無い足取りでトイレへ向かった。

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