33 / 51
運命なのかは後にして㉜
俺等は、予定通り定時で仕事を終わらせいつもの居酒屋へ来ていた。
この店のこれが旨いだの、この酒が旨いだの仕事の話し…そして酒がいい感じに回った時、互いの間に心地良い沈黙が流れた。
「俺さ…最近、眠れてないんだわ」
「ああ…だから◯ガシャキ」
「そう…◯ガシャキ…なんかさ、志之 が会いたいって言ってるって…あっ志之は俺の父親ね。よく間違われるだよ女に…紛らわし名前だ」
「会いにいかないんですか?」
「正直、今更って感じで…それに病気らしい…もう長くないって」
「会いに行った方がいいと思いますよ」
「……勝手過ぎんだろう。大体、おまえに俺の気持ちが分かんのかよ」
「そうですね。俺には分からないです…両親事故で亡くしてますから」
「……ごめん…俺また」
土師 は、ゆっくり首を横に振って無言のままハイボールを飲んだ。
「……会って文句の一つや二つ言ってやればいいんじゃないですか?」
「おまえ結構…強いな」
「そうですか? まぁ俺には妹がいるし、その分助かっていたのかもしれない。それに、言いたくても…もう言えませんから……」
俺がグラスを持ち上げ、傾けると中の氷が音を立てた。また、沈黙が流れる。
「あれ? 土師に中條さん?」
いい感じの沈黙をぶち破ったのは小賀 だった。その隣には同期の滝川 も一緒だ。
あの時の醜態を思い出し、俺は小賀と滝川に謝罪した。
「いやいや…あれはこいつが悪いんで」
「そうそう俺が悪い…なんならまたご一緒しません?」と小賀が俺と土師を交互に見る。
「いいんですか?」俺はノリノリで立ち上がった。
「先輩飲み過ぎたないで下さいよ」横で土師が睨んた。
「分かってるって」
よく分からない四人が飲んで食って、滝川は営業らしく話しは上手いし、小賀も元営業だったらしく話しは尽きない。
「俺…ちょっとトイレ行ってくる」
「先輩…大丈夫ですか?」
「大丈夫…おまえは俺のおかんですか」
俺は、ちょっと覚束無い足取りでトイレへ向かった。
ともだちにシェアしよう!