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運命なのかは後にして㊳

 由樹之(ゆきの)は、疲れたのかまた目を閉じ寝てしまった。  病室の向こう側で話し声が聞こえ、ドアをノックし結之助(ゆいのすけ)結之助(まきの)が入ってきた。  作業用の上着にスーツ姿の真樹之は、少し疲れた顔をしていたが、結之助と話をする姿を見て俺の見間違いだったようだ。  本当によく喋るオッサンだ…… 「お疲れ様です。島野部長、今日は休日出勤だったんですか?」俺は、立ち上がり丸椅子に真樹之を促した。 「ああ、よくある機械トラブルだって仕事の話しはよせ…拓巳…もうプライベートだ」真樹之は、促した丸椅子には座らず、俺と結之助を見て笑った。   その姿できと来てよくゆーわ! 「由樹之はどうだ?」 「さっきまで起きたけど今は寝てるよ」 「そっか…由樹之は志之(しの)が好きだったからな。相当ショックだったんじゃないか…で、拓巳はどうすんだ?」 「……会いにいくよ」俺は、真樹之から視線を逸らし俯いた。 「そうか、なんなら俺がついていってやろうか?」真樹之が、俯いている俺を覗き込んで揶揄うように笑った。 「止めてくれ…子供じゃあるまいし」 「そう怒んなって、相変わらず可愛くない。あっ結之助についていってもらえば? どうせ、おまえのことだから土壇場で逃げそうだし?」 「……うるさい…な」 「俺…いいよ…ついていっても」真樹之を睨む俺を宥めるように、結之助が腕を掴んだ。 「だってよ…拓巳。もう、おまえ等…帰れ。特に結之助はちゃんと帰りなさい」 「え……や、でも……」結之助は、心配そうに由樹之を見た。 「後は、 大きい兄ちゃん( 真樹之  )に任せなさい!」 「誰が大きい兄ちゃんだ。オッサンの間違いだろう」 「ああ? なんか言ったか拓巳?」 「もう…拓巳さんも真樹之さんも止めろよ…ここ病院なんだから」結之助が見兼ねて間に入った。 「ほら、帰れ帰れ」真樹之は、しっしっと俺等を手で払う仕草をした。  真樹之に病室を追い出さた俺達は仕方なく帰ることにした。  その帰りの電車で結之助が寝てしまい、俺の最寄りの駅まで着いてしまった。 「結之助起きろ」 「……あ、何処?」 「俺が降りる駅」結之助の腕を掴んで電車を降りた。 「なんか腹減ったな…何処か入るか?」 「いや、俺は」結之助のマスクを見て気付き「ああ…そうだ俺、適当に作るからうち来いよ」と言ったら遠慮がちに結之助が頷いた。 「その代わり荷物取ってな」 「……了解」 「よし!」

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