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運命なのかは後にして〜最終章〜
午後から村瀬を連れ、これから担当するであろう顧客リストの順に挨拶回りへ出ていた。今日のスケジュールが終了し、俺と村瀬は駅へ向かっていた。
「村瀬は、このまま直帰していいよ。明日もよろしくな」疲れた様子の村瀬の背中を軽く叩いた。
「中條先輩、お疲れ様でした」
「はい、お疲れさん」
村瀬は、改札口へ歩いていった。その姿を見送ると、大きなため息を吐いた。
俺は、社に戻るため改札口を入りホームへ向かった。その途中で作業用の上着でスマホが鳴った。着信の相手を確認し嫌な予感がした。
「……由樹之 さん?」
「拓巳か…志之:(し の)が……」
「親父が…な…に?」
____え?
考えるより身体が先に動いた。俺は、志之のいる病院へその最寄駅から病院まで走った。
俺が病室に駆け込んだ時には、志之が息を引き取った後だった。志之の顔に、白い布が掛けられていて____
「親父!!」
俺は、志之の手を握った。その手は、微かに残る温もりと、最後に触れた時より更に細くなっていた。
悲しんでいる時間もなく、慌ただしく色々な手続きや準備をしなければならなかった。葬儀は、志之の希望で親族やごく限られた人数で行われた。遺影の志之は、少し若い時の写真だった。
俺が知らない親父だ……
「……拓巳さんちょっと休んだら?」結之助 が心配そうに俺の手を握った。
「大丈夫…ありがとうな」俺は、結之助の手を握り返した。
二十年以上会わなかったんだ最後くらい傍にいてやりたい……
無事に全てが終わり、親戚を送り出した時にはもう陽が傾いていた。
俺は、結之助に一旦、帰宅するといった。自宅の玄関を開け中に入った。俺は、ベッドの上に座りぼんやりと部屋を眺めた。机の上に置いたままの小さな箱に目が止まり、俺は、カッターで布テープの封を切った。
その中身は、数枚の写真か入っていた。その一つは、あの時の衝撃でガラスが割れていたが写真立てだった。家族で撮った写真が一枚入っていて、若い頃の父と母、真ん中には俺が写っている。幸せそうに笑う二人。その他の写真には、若いと由樹之 真樹之が父と母と一緒に写っていた。
なんで俺がこれを持ってたんだろう……ああ…俺…一人になっちゃった……
あんなに悲しかったのに、志之が亡くなった後も、葬儀でも涙なんて出でこなかったのに、眼から溢れて止まらなかった。俺は、持っていた写真を強く握り締めた。
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