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体育祭編『第18話』

「ところで、祐介さんはお元気ですか?」 「ああ、ピンピンしてるよ。もともと脚が悪いこと以外は健康そのものだしさ。あいつも夏樹に会いたがってたな」 「そうですか……。ちなみに祐介さんは、将来的にどうなるんですか? もう家元にはなれないんですよね?」 「あー……多分、分家するんじゃないか? これは大抵の家がそうなんだけど、長男が家元を継いだ場合、次男や三男は分家することになるんだよ。だから祐介も、いずれは分家するんだと思う」 「へえ……そうなんですか」  もともと千利休から始まった茶道は、その長男や孫が分家し、今は「表千家(一応これが本家)」、「裏千家」、「武者小路千家」と大きく三つに分かれている。  細かい流派をあげればキリがないが、このように本家を継ぐのはたった一人で、その他の人は分家するというのが伝統的なしきたりのようだ。  家系図が複雑なことになりそうだな……とズレたことを考えつつ、夏樹は市川の隣を歩いた。彼はカラフルなケーキをカートに入れているところだった。 「ところで、今年の体育祭はどんな種目をやるんだ?」 「どうって……いつもと同じですよ。騎馬戦とか」 「騎馬戦か~。夏樹は当然、上だよな?」 「……そうですけど、何か?」 「そしたらちゃんと練習しとかなきゃ。帽子盗られないようにさ」 「あんなの練習しようがないでしょ。下の人とのチームワークもあるし」 「いや、敵の手を華麗にスルーする技術くらいは身につけておいた方がいい。俺が後でいろいろ教えてやるから、特訓しようぜ?」 「はあ……じゃあ、お手柔らかに……」  騎馬戦……もとい、体育祭自体そんなにやる気がないのだが、せっかくだから市川につき合ってやるのも悪くない。 (先生が観戦している前で、みっともない格好を晒したくないしね)  もっとも、市川がやる特訓だから、ロクでもない特訓の可能性が高いけれど。

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