次に夏樹が目を覚ましたのは、狭いバスルームではなくベッドの上だった。身体に塗られた生クリームもすっかり洗い流され、腹中の違和感もなくなっていた。 　変態プレイばかりの変態教師だけど、アフターケアだけは毎回しっかりしている。夏樹としてはすごく楽だけど、ちょっぴり申し訳なくも思う。 「おう夏樹、目覚めたのか。食べられそうなら夕食にする？」 　と、市川が声をかけてきた。 　身体を起こし、いい匂いがするテーブルの方へ目をやる。既に市川が夕食を作っておいてくれたらしく、サンドイッチやスープなどが並んでいた。 　あれだけ食材を買い込んでいたからガッツリした食事にするのかと思っていたのに、軽食のようなメニューになっていた。 「先生、それだけで足りるんですか？」 　席につきながら聞いたら、市川はいっそ爽やかな口調でこう言った。 「いや、俺は夏樹をいっぱい味わったからこれくらいがちょうどいいんだ」 「なっ……！」 「お前もそうだろ？　エッチの後はあまりガツガツ食べる気にならないって、いつも言ってるじゃないか」 「それはそうですけど、先生をお腹いっぱい味わったからじゃないですから。単に疲れて食欲なくなるだけですから」 「ま、どっちでもいいよ。早くメシにしようぜ」 　仕方なく夏樹は、手近にあったサンドイッチを手に取った。 　業務用スーパーで大量に買い込んだステーキ肉を焼いて薄くスライスしたものが挟まっており、サンドイッチと言いながらなかなか贅沢な一品になっていた。味付けも抜群だった。 （料理も無駄に上手なんだよな、この変態教師……） 　手先が器用なところは、いかがわしい玩具をハンドメイドしてしまうところに通じているのだろうか。 　もちろん不器用よりも器用な方がいいけれど、市川の場合は才能の使い方を間違っているような気がする。