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体育祭編『第38話』

「だから何もしねぇよ。今日は野暮用があってここに来たんだ」 「……野暮用?」 「大学に提出する書類とか、いろいろあるんだよ」 「……あ、そうですか。じゃあ俺はこれで」  話しているのも不快に思い、夏樹はさっさと立ち去ろうとした。嫌な奴には関わらないのが一番だ。  そんな夏樹に、河口が後ろから追い打ちをかけてくる。 「ああ、そう言えば市川先生、学校辞めちゃったんだってな」 「っ……!」  一気に頭に血が上り、思わず河口をキッと睨み付ける。 「あんたのせいでしょ! あんたが余計なことしなければ、先生は今でも体育教師として働いてましたよっ!」 「オレが辞めろって脅したわけじゃないぜ? そんなのオレの知ったこっちゃねぇ」 「このクズ男! あんたなんか先生にボコボコにされればよかったんだ!」  どうせ学校辞めるなら、再起不能になるまで殴らせてあげればよかった。わざわざ止めるんじゃなかった……と、心の底から後悔する。  だが河口は、更に夏樹の神経を逆撫でするようなことを言ってきた。 「ていうかお前、まだ市川センセとつき合ってんのか? お前を捨てて勝手に学校辞めちゃったヤツなのに。あんなののどこがいいんだよ?」 「うるさいな! あんたなんかに先生のよさはわかんないよ!」 「わかんねぇなぁ。オレからすれば市川センセなんて、筋肉馬鹿の体育教師だからよ」  そんなことを言われて、とうとう夏樹もぶちギレてしまった。 「勝手なことばかり言うな! 先生はかっこいいし優しいし、運動もできるし料理も上手いし、文化的な才能も持ってるすごい人なんだぞ! ちょっと変な性癖持ってるけど、誰もがびっくりするようなスパダリなんだ! あんたなんかとはもともと格が違うんだよ!」  と、一気にまくし立てた次の瞬間、後ろからこんな声がした。 「へえ~? そんな風に思ってくれてたとはねぇ」 「……えっ?」

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