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体育祭編『第47話』

「もおおお! ホントに信じらんないっ!」  夏樹が目を覚ました時には、既に日は西に傾いていた。騎馬戦どころか閉会式まで終わってしまったようで、生徒もほとんど帰ってしまっていた。 「なんてことしてくれたんですか! ほんのちょっとならまだしも、これじゃ全面的に体育祭サボったことになっちゃうじゃないですか!」 「大丈夫だよ。夏樹は『体育祭の途中で具合が悪くなって早退した』ってことになってるから」 「そういう問題じゃないっ! いくらなんでもひどすぎます! 高校最後の体育祭だったのに!」 「あれ? 夏樹、そんなに体育祭参加したかったのか? 運動嫌いだから、てっきり面倒くさいと思ってるのかと……」 「そ、そりゃあ……基本的には面倒ですけど、それでもこんな形で台無しにされるのは心外なんですっ!」 「そ、そうか……それは悪いことしたな……」 「悪いなんて思ってないでしょ! まったく先生はなんでこうも変態……」  そう怒鳴ろうとしたのだが、唇を塞がれてそれ以上言うことができなかった。黙らせるようなキスを受け、その後ギュッと強く抱き締められる。 「……ごめんな、夏樹。体育祭、台無しにしちゃって。代わりにもっといい思い出をいっぱい作ってやるから……それで許してくれ、な?」 「う……」 「愛してるよ、夏樹……」  ……この一言で何もかもどうでもよくなってしまうのも、我ながらどうかと思う。 (まったく……俺も単純だよな)  結局自分は、何をされても市川を嫌いになれないのだ。今更ながら、それを思い知らされた。  仕方なく、彼の分厚い胸板に顔を埋めて、こう呟いた。 「……先生、またこっちに来てくださいね」 「おう、もちろん! ちょいちょい様子を見に来るから安心してくれ! なんなら週一でもいいぜ?」 「……そこまでしなくていいです」  長期休暇の時は、俺が京都に出向くことにしよう。  お金貯めておかなきゃな……と思いながら、夏樹は市川の腕に包まれていた。

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