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初めてのお稽古編『第11話』

「是非お願いします! 俺にお稽古つけてください!」 「よし、じゃあ決まりだ。健介、稽古の準備して来なよ。僕は夏樹くんを着替えさせるから」 「ええー!? 夏樹を着替えさせるのは俺の仕事だろ! そこは絶対譲らないからな!」 「は、何? じゃあ僕に水屋の仕事して来いって言うの?」 「いや、水屋も俺がやる。祐介は手出さなくていい」 「何それ。せっかく手伝ってあげようと思ったのに」 「余計なお世話だよ。こう見えても俺は元教師だからな。人に教えるのは慣れてるんだ」  シッシッと手を振る市川。  あんまりな態度に(たしな)めようとしたが、祐介は一拍早く杖を掴んで立ち上がった。 「あ、そ。だったら好きにしなよ。道具、間違ったものを使わないように気を付けてね」 「あっ、祐介さん……」  杖をつきながら、祐介が応接室を出て行く。パタンと閉められたドアを見て、夏樹はジロリと市川を睨んだ。 「ちょっと先生、あんな言い方しなくてもいいじゃないですか」 「気にすんな。これくらいいつものことだ」 「だけど、何もあそこまで邪険にしなくたって」 「祐介はちょっとお節介なんだよ。自分の弟子は自分で面倒を見るのが当たり前だ。学校だってそうだろ? 他の先生のやり方に、あーだこーだ口は出さないもんだし」 「それはそうですけど……」 「頼んでもいないのに他人の稽古に口出ししてくるのは、余計なお世話以外の何物でもないんだよ。例え親切で言ってくれたとしてもな」 「…………」  その理屈はわかる。自分の弟子は自分で面倒を見るべき……というのは、至極真っ当な意見だ。夏樹だって理解できるし、間違っているとは思わない。  でも、先程の口調はどちらかというと「邪魔な人を遠ざける」といった意味合いの方が強かったように感じたのだが……。 (先生、ちょっと機嫌悪い……?)  屋敷に足を踏み入れた時から、ずっとご機嫌ナナメ……というか、いつもの快活さが薄れている気がする。  天敵の美和さんに遭遇したからだろうか。それとも、もっと他に引っ掛かることがあったんだろうか……?

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