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初めてのお稽古編『第25話』
「これからも健介のことよろしくね。あの通り変態だけど、悪い人じゃないから」
「はい、任せといてください」
祐介に笑い返し、夏樹はその場を離れた。そして教えてもらった倉庫へ向かった。
母屋の裏側に回ったら、目的の倉庫はすぐに見つかった。
(あれだな?)
瓦屋根に白壁の建物。まるで時代劇に出て来そうな倉だった。
密室だから中はさも暑いのだろう……と思って恐る恐る入室したら、意外と涼しくなっていてびっくりした。
(というか、ここ本当に倉庫?)
土足禁止のフローリングの床に、柔らかそうなカーペットが敷かれている。多分、万が一道具を落としても割れにくくするためだろう。しかも暑さに弱い道具でもあるのか、きちんとエアコンが利いている。
外装にそぐわず、かなり現代風にリフォームされていた。普通にここで寝泊まりできそうだ。
すごいなぁ……と思いながら、きょろきょろ周囲を見回す。市川がいるかと思ったのだが、どうやらここにはいないようだ。
いないのではしょうがない。
また茶室に戻ろう……と思い、そのまま倉庫を出ようとしたのだが、
「あっ……!?」
靴を履いている時、後ろから黒い布で目を塞がれ、腕を掴まれてずるずると倉庫の中に引きずり込まれてしまった。
「だ、誰!? やめ……放して!」
脚をばたつかせて抵抗したが、どうやら相手は複数人いるらしい。暴れる脚を片方ずつ抑え込まれ、両手を頭上で押さえつけられては、もう振り解くことはできなかった。
視界を奪われているので何人いるかわからないが、少なくとも三人はいそうな雰囲気だった。しかも力加減からして男性っぽい。
一体何なんだ? こんなことをして、一体どうするつもりなんだ? この人達、一体何者なんだ……?
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