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初めてのお稽古編『第32話』

「いや、目的はいろいろだ。でも、人目を気にせずハンドメイド作業に集中できる場所、前々から欲しかったんだよな~。さすがに実家でこういうのは作れないじゃん?」  ……開いた口が塞がらないとはこのことだ。 「もう信じらんない! ほんっとに先生、バカじゃないの!? いつも思ってるけど、変態すぎでしょ!」 「そうか? でも、そんな俺が好きなんだろ?」 「好きじゃないですっ! もっと真っ当な性癖の方がよかった!」 「おいおい、嘘はよくないぞ~? 夏樹だっていろんな玩具に攻められて、結構楽しんでるじゃん」  市川がピンクの玩具片手にこちらに近づいてくる。 「せっかくだから俺のハンドメイド作品、試してみる? どこまで使えるか、実験するのも面白いと思うぜ?」 「い、いえっ! 結構です!」  テーブルに置いてあった市川のスマホを投げつけ、夏樹は急いでソファーから立ち上がった。 「俺、シャワー浴びて来ます! 絶対入って来ないでくださいね!」  そう言い置き、逃げるようにリビングから離れる。  危ない、危ない。もう少しで市川の怪しげな玩具に弄ばれるところだった。お屋敷でヤったばかりなのに、また挑まれてはかなわない。  脱衣所で服を脱ぎ、風呂場に入る。鍵がついていたので、念のために施錠することにした。これで市川は入って来られない。 「ふー……」  シャワーコックをひねり、温かいお湯を全身に浴びる。真新しいスポンジにボディーソープをつけて、身体中を丹念に洗った。体内に出されたものも、指を突っ込んでできる限り外に掻き出す。  その時、風呂場の外から市川の声が聞こえて来た。 「おーい、夏樹~! せっかく裸になったならついでに玩具も試してみようぜ~!」 「だからやらないって言ってるでしょ。あっち行っててください」 「いいじゃん、風呂場なら掃除も楽だしさ~。遠慮せずにやろうぜ~?」 「遠慮じゃありません。いいから早くあっちに……」  そう言いかけた時、何故か風呂場の鍵がカチャッと開いた。  ぎょっとしているのも束の間、全裸の市川が当然の顔をして入ってくる。

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