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跳び箱編『第8話*』
「じゃあ開脚して、身体倒せるところまで倒してみて」
言われた通り、九〇度ほど開脚し身体を三〇度くらい倒してみせる。
すると市川は今度こそ呆れた顔をして、言った。
「……お前、それ本気?」
「本気ですが何か?」
「一八〇度開脚は期待してなかったけど、それじゃほとんど脚開けてないじゃん」
「わかってますよ! これが今の俺の限界なんだから仕方ないでしょ!」
「……なんで逆ギレしてんだよ」
やれやれ、と背中側に回ってくる市川。そして夏樹のすぐ後ろに座り込むと、両脇から手を伸ばし、内腿をギュッと掴んできた。
夏樹はびっくりして肩越しに振り返った。
「ちょっ……先生、どこ触ってるんですか! 変態!」
「変態ってなんだよ。お前の股関節が硬すぎるから、マッサージしてやるんだろ。おとなしくしてろよ」
「できるか! ていうか、マッサージ方法絶対おかしいでしょ!」
「おかしくないって。俺は体育教師だぞ? それに、身体が柔らかい方が運動には有利なんだ。股関節柔らかくするのは基本なんだから」
「そんなこと……っ」
後ろから羽交い絞めにされ、内腿を掴まれて、脚の付け根を揉み解される。トイレでの出来事が脳裏をよぎり、無意識に身体が強張った。
これ以上やられたら絶対大変なことになると思い、夏樹は声を荒げた。
「ちょっと先生! もういい加減にして……」
手を払い除けようと下肢に視線を落とした瞬間、愕然とした。自分の目に映ったものが信じられなくて、何度も目をしばたたかせる。
(う、嘘……!?)
股間の布地が中途半端に押し上げられている。何か違和感があるなと思っていたけれど、まさか本当に勃起しているなんて。
何故マッサージごときに反応してしまうのだろう。大事なところにはまだ触れられていないのに。
もしかして身体が覚えてしまったんだろうか。トイレでの手淫があまりに強烈すぎたから、触られると勝手に反応するようになってしまったのだろうか。そんな馬鹿な……。
「……あれ、勃っちゃった? やっぱ高校生は反応が早いな。若い証拠だ」
完全に動揺している時にそんなことを言われ、夏樹は慌てて市川の手を押さえた。
「ち、違いますから! 先生のマッサージに反応したわけじゃないですからっ!」
「じゃあ何に反応したんだ? 他に反応するもの、あったか?」
「知りませんよっ! もう成績『1』でいいですから、これ以上は……」
市川を振り払い、立ち上がって逃げようとしたが、
「……うわっ!」
彼に手を掴まれて、再び腕の中に戻ってしまう。今度は後ろからしっかり抱き締められた状態で、耳元で囁かれる。
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