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性活指導編『第9話*』
太ももを擦り合わせ、思わせぶりに市川を見上げると、彼は苦笑しながら小鼻を押さえた。
「……おいおい、そんなに煽るなよ。鼻血噴きそうになるだろ」
「その歳で興奮して鼻血? みっともな……」
「でもお前から誘ってくるなんて滅多にないじゃん。だから、つい……な」
素早く夏樹の下着を剥ぎ取る市川。自身もサッと服を脱ぎ、全裸になって夏樹の脚を抱え直す。
(そういえば、先生の裸って見たことなかったかも……)
普段は人目を忍びながら身体を重ねているので、完全に衣服を脱ぐことはなかった。夏樹も市川も常に何かを纏っていて、こんな風に全裸で抱き合うことは一度もなかった。そう考えると、ちょっと感慨深い。
膝頭を掴まれ、左右に割り開かれる。かなり大きく開脚させられたが、思ったより股関節が痛まなかった。
「おっ? 随分身体柔らかくなったじゃないか。俺が教えたストレッチ、毎日やってるみたいだな」
「べ、別に毎日ってわけじゃ……」
「いやいや、こういうのはやってるかやってないかすぐわかるんだよ。身体は正直だからな。一八〇度開脚できるようになったら、今度はシックスパック目指してみる?」
「……それは遠慮しときます」
市川のことは好きだが、彼のようになりたいとは思わない。自分は腹筋に縦線が入るくらいで十分だ。あまりハッキリしたシックスパックを作ると違和感がありそうだし。
「あっ……」
窄まりに市川の先端が当てられる。熱くて硬い肉棒を期待して、知らず知らずに入口がばくばく痙攣する。
「……そういやお前、どこまでやられたんだ?」
「は?」
挿れられる直前、市川が思い出したように聞いて来た。どこまでって何のことだ……と思ったが、すぐにさっきの事件のことだと気付いた。
「……最後まではやられてませんよ」
「でも挿れられたんだろ?」
「……だからなんですか」
あいつらに襲われたのは俺のせいじゃない。
ムッとして市川を見上げたら、彼はキュッと眉根を寄せて口を尖らせた。
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