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夏休み編『第13話』

 気だるい身体に鞭打って、シャワーを浴び、念入りに身体の汚れを落とした。  全身を綺麗にし、別の浴衣用の下着を用意したところで(情事の最中に乱れて汚れた)、改めて着付けを再開する。 「……ったく、先生のせいで余計に時間かかっちゃったじゃないですか」  この変態教師、と罵ったら、市川は涼しい顔でこう言った。 「まあいいじゃないか。夏樹だって溜まってたんだしさ」 「べ……別に俺は、そんな……」 「まあまあ。じゃ、早速着付けてみるか」  一緒に着て教えてくれるのかと思いきや、市川は夏樹に直立していることを指示し、数本の紐を使って手際よく浴衣を着付けてくれた。  仕方なく夏樹は、おとなしくマネキンになりきることにした。  浴衣を着せられ、帯を結ばれ、髪まで綺麗にセットされたところで、姿見の前に立たされる。 「ほら、できた。可愛いだろ」 「あ……」  自分で言うのも何だが、確かに可愛い仕上がりになっていた。  一番シンプルなものを、と選んだ流水模様の浴衣は涼しげな白地で、緑色の帯によくマッチしている。  背中の帯は蝶結びではなく、飾り結びとかいう、蝶結びより華やかなものになっていた。  着物の後ろ襟も拳ひとつ分くらい下がっていて(衣紋抜きというらしい)、綺麗なうなじがよく見えている。  茶色の髪もスプレーで緩くウェーブがかけられており、今時のゆるふわヘアーが完成していた。  これならどこをどう見ても可愛い女の子……というところで、夏樹はハッと気付く。 「……って、やっぱりこの浴衣、女性用でしょ!」 「うん、そうだけど何?」 「『何?』じゃない! これじゃ俺、女装してるみたいじゃないですか!」 「ああ、そうとも言うかな。それがどうかした?」 「開き直るな、変態教師!」  猛然と腹が立ってきて、夏樹は自分の帯に手をかけた。

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