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夏休み編『第14話』

 豪快に脱ぎ捨ててやろうと思ったのだが、その手を市川に掴まれ止められる。 「なんで脱いじゃうんだよ? せっかく綺麗に着付けたのに」 「俺は男です! ちゃんと男物の浴衣にしてください! ないなら私服で行きます!」 「えーっ? いいじゃん、少しくらい。顔見知りに会うわけじゃないんだしさ」 「わかんないでしょ! 知り合いがいたらどうするんですか!」 「いたとしても、それだけ可愛くなってれば夏樹だってバレないって。せっかくだし、そのままで行こう、な?」 「嫌です! 先生だけならまだしも、この格好で大勢の人がいる祭りに出掛けるなんて……」 「硬いこと言うなよ。たまには羽目外すことも必要だぞ? それにホラ、お前が着てくれなかったら浴衣の製作時間がパーになるじゃん」 「……えっ?」  夏樹は動きを止めて市川を見上げた。 「これ……先生のお手製だったんですか?」 「そうだよ。夏樹に似合いそうな生地を集めて、一から全部手縫いしたんだ。自分で言うのもなんだけど、結構頑張ったんだぞ?」 「…………」  改めてハンガーにかかっている浴衣を眺める。色とりどりの浴衣は、ざっと見ただけで十着以上はあった。  浴衣なんて一着作れば十分なのに、この教師は夏樹のために十数着分を全部手縫いしたという。  あまりの熱意に、思わずこう呟いた。 「なんでこんなに……」 「いや~……夏樹、可愛いからさ。あれも似合いそう、これも似合いそうとかいろいろ考えたら、つい止まらなくなっちゃってな~」  ハッハッハ、と笑い飛ばしている市川。

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