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夏休み編『第15話』

(もしかして、十日以上も音沙汰無しだったのは浴衣を作ってたから……?)  誰かに手伝ってもらったのかもしれないが、だとしても、この数の浴衣を作り上げるには相当な時間と労力が必要なはずだ。  仕事でもなく、大勢のためでもなく、たった一人のためにそれだけのエネルギーを割くというのは、余程の思い入れがないとできないと思う。 (ホントにこの教師は……)  不覚にも胸がキュンと疼いた。  筋肉馬鹿で、単純で、いかがわしいプレイばかり仕掛けてくる変態だけど、それ以上にいいところがたくさんある。愛情のかけ方もハンパじゃない。  そんな人が相手だから、こちらもつい絆されてしまう……。 「……わかりましたよ。今日だけ特別にこの格好でいてあげます」  そう言ったら、市川はさも嬉しそうに夏樹を抱き締めて来た。 「よかったー! じゃ、今日は浴衣デートしような! 浴衣でイチャイチャするぞー!」 「……やっぱりそれが目的だったんですか。下心丸見えですよ」 「恋人相手に下心も何もないだろ。というわけで、俺もパパッと着替えちゃうからな」  鼻歌混じりに、シンプルな藍色の浴衣に袖を通す市川。 (男性用の浴衣、普通にあるじゃん……)  この格好で市川と歩いたら、普通に男女のカップルだと思われるんだろうな……と、夏樹は姿見に映った自分を眺めた。

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