59 / 282
夏休み編『第27話』
ハッとそちらに目をやった瞬間、バリンという派手な音と共に誰かの拳がガラス窓を突き破った。
「な、なんだ!? 一体誰だ!?」
男どもが慌てふためいている間にその手は車のドアに伸び、内側から鍵を開け、次いで勢いよくドアを開けた。勢い余ってドアが外れそうになった。
「……お前ら、俺の夏樹に何してんだ」
市川が一番近くにいた男の胸倉を掴む。そしてゴミでも扱うかのように、車から道端に放り投げた。
「てっ、てめぇ!」
投げ飛ばされた男が掴みかかるも、あっさりそれをいなして再びポイッと投げ飛ばす。車の中に残っていた男たちも次々につまみ出して、外に放り投げて行った。
最後に一人残った夏樹に対し、早口に言ってのける。
「夏樹、ちょっと待っててくれ。すぐ片付けるから」
そして指をバキバキ鳴らしながら三人の男たちに近づいて行った。
「な、なんだてめぇは! こっち来んな!」
「やっちまえ!」
逆上した男たちが一斉に襲い掛かってくる。
市川は全く慌てず彼らを見据え、殴り掛かってくる男の手を掴んだ。そしてくるりと腕を捻り、迫ってくる男に向かって突き飛ばす。
次いで、もう一人の男の足を引っ掛けて転ばせ、ずるずるとそいつを引き摺って近くのゴミ収集所に放り込んだ。
「く……コノヤロー!」
体勢を立て直した男が後ろから襲い掛かってくる。
「あっ、危ない!」
だが市川はサッと首を傾けて避け、拳を突き出した男の腕を掴んで勢いのまま投げ飛ばした。男は見事にゴミ収集所にゴールした。夏樹が声を上げるまでもなかった。
(……かっこいい……)
三対一でも全然負ける気がしない。無駄な動きはほとんどなく、次々に男たちをゴミ収集所に放り込んでいく。
ともだちにシェアしよう!