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保健の授業編『第1話』

「保健、ねぇ……?」  笹野夏樹は『保健・体育』の教科書をパラパラとめくった。  今日の体育の授業は、珍しく大教室で行われる。身体を動かすいつもの授業の他に、年に数時間は「保健」の時間を、とカリキュラムで決められているそうだ。  身体を動かすのが嫌いな夏樹にとっては、デスクワークの授業は万々歳である。体育の授業なんて全部「保健」に変わってしまえ、とさえ思う。  ただ、授業の内容に関しては若干嫌な予感がしないでもない。 (だって、「保健」って要するに性教育だし……)  あの教師、絶対ノリノリで授業するんだろうな……と、げっそり考える。  保健・体育の教師と言えば、爽やか系イケメンとして人気の市川慶信だ。体格がよくジャージの似合う好青年で、外面だけなら子供向け教育番組の体操のお兄さんとして採用されてもおかしくないと思う。  けれど実際の市川はイケメンの皮を被ったとんでもない変態教師で、数々の羞恥プレイを夏樹に仕掛けてくるという困った性癖があった。  トイレで一方的に抜かれたり、「補習」の名の下に体育館に呼び出され、挙句跳び箱の上でさんざん犯されたことを思い出す。  それがきっかけで市川と付き合うことになってしまったのだが、恋人になってからも彼の変態っぷりは変わらず、学校のプールでセーラー水着を着せられたり、誕生日ケーキの生クリームを大事なところに塗りたくられたり、夏祭り前に女物の浴衣を着せられたりと、やりたい放題だった。昼休みにこっそり抱かれたり、自宅で足腰を潰されたりするのもザラだ。

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