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冬休み編『第5話*』

「へえ……? 嫌がってる割には結構反応してんじゃん。お前、相当な淫乱だな」 「っ……あっ」  いつもより少しだけ熱を持ち始めた股間を握られ、鼻にかかった声が漏れた。  河口のキスで反応したつもりはないのだが、市川に開発されてしまったせいか、ちょっとした刺激でも過敏に反応するようになってしまったみたいだ。  河口がやや蔑んだような口調で言う。 「こんだけエロい身体してりゃ、市川センセも簡単に落とせるだろうな。あのセンセ、単純そうだしさ」 「な……っ!」  そんなんじゃない。夏樹は肩越しに河口を睨みつけた。  何も知らないくせに、勝手なことばかり言うな。俺が先生を誘ったわけじゃないし、そもそも先生はそこまで単純な人間じゃない。スポーツしかできないように見えるけど、本当はものすごく多才な人なんだ。料理も和裁もできるし、お茶も着付けも身につけてるんだぞ!  自分が市川を「筋肉馬鹿」だの「変態教師」だのと罵るのはいいけど、他人にそうやって言われると腹が立つ。 「なんだよ、そんな目でこっち見んな」 「っ……!」  バシッと尻を叩かれて、夏樹は眉間にシワを寄せた。  できることなら、すぐさまこいつに「痴漢撃退パンチ」をお見舞いしてやりたい。市川以外の人物にやられるなんて冗談じゃなかった。  でも、この関係をバラされたら市川はクビになってしまうかもしれない。それだけはなんとしても阻止しなくては。これまで何度も先生に助けられてきたんだから、今度は俺が先生を守らなくちゃ……。

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