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冬休み編『第15話*』

「いや~ラッキーだな~。またなっちゃんに突っ込めるとは思わなかったわ」 「前回は途中で邪魔が入っちまったからな~。今度はオレにも挿れさせてくれよ?」  男たちがそんな会話をしているのを聞いて、夏樹の身体に衝撃が走った。  そう言えばこの声、この口調……聞いたことがある。  当時は目を塞がれていたから顔までは認識できなかったけど……もしかしてこいつら、空き教室で先生を待っている時、後ろからいきなり襲い掛かってきた連中か!?  今更ながらあの時の犯人を思い知ったけれど、上と下の口を同時に犯されてすぐに思考を掻き消されてしまった。  こいつらが誰であろうと、どうでもいいことだ。市川先生以外の人間にやられるなら誰だって同じだから……。 (……先生……)  混濁した意識の中、夏樹はぼんやりと彼の顔を思い描いた。  今先生は何をしているだろう。こんな調子じゃクリスマスは一緒に過ごせそうにないし、これからお正月に入るから、もしかしたら実家に帰っているかもしれない。  そう言えば、先生の実家ってどこにあるんだっけ。今まで聞いたことがなかった。というか、先生の身の上話はあまり聞いてこなかったな。家族は何人だとか、子供の頃は何をしてたとか……今度そういう話もゆっくり聞かせて欲しいな……。  そんな他愛のないことを考えていたら、いつの間にか意識が途切れていた。 ***  この後どうなったかはよく覚えていない。きっと五人の男たちに次々マワされたのだろう。それは目覚めが最悪だったことから、なんとなく想像がつく。  だけど、記憶が途切れていることに関してはある意味ありがたいなと思った。こんな出来事を鮮明に覚えていたら、それこそもう二度と市川と顔を合わせられなくなる。 「先生……」  汚れたところの後始末をしながら、夏樹は溢れてきた涙を拭った。  あと数ヶ月もすれば解放される。そう自分に強く言い聞かせて……。

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