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冬休み編『第25話』
何か言いたげな顔をしていたが、結局何も言わずに夏樹を座らせ、自分は受付で会計を済ませていた。
「……帰ろうか」
夏樹は機械的に頷いた。
市川が運転する車に乗り込み、ただボーッと外を眺めた。クリスマス特有のイルミネーションが綺麗だった。
(来年は、もう少しちゃんとしたイルミネーション見に行きたいな……)
今年はいろんなことがあったから、来年はいい年になるに違いない……。
そんなことを考えていたら、ちょっとうとうとしてしまった。短い間だったが、楽しい夢を見ていたような気がした。
「……夏樹、ついたぞ」
優しく声をかけられ、夏樹はふと目を覚ました。そこは自分の家の前だった。市川のマンションではなかった。少し残念に思った。
起きた途端、現実的な額の疼痛が襲ってきた。このズキズキする痛み、地味に鬱陶しい。冬休みが終わる頃にはある程度治っているといいのだが。
のろのろと車を降り、自宅のドアまで歩いていった。市川も黙ってその後ろからついてきてくれた。
夏樹はドアに手をかけ、痛い唇を懸命に動かしてこれだけ言った。
「……いろいろ迷惑かけてすみませんでした。詳しいことはまた後で話しますので」
「夏樹」
ここでようやく市川が口を開いた。
何を言うのかと思っていたら、彼から飛び出してきたのは驚くべき言葉だった。
「別れよう」
「…………えっ?」
あまりにも唐突すぎて、本気で聞き間違いかと思った。
夏樹は市川を見上げ、聞き直した。
「……今、なんて言いました?」
「別れようって言ったんだよ」
「いや、そんな……」
なんでいきなりそんなことを言うんだろう。先生に相談しなかったことを怒っているんだろうか。トラブルばかり引き起こすから、いい加減愛想を尽かされてしまったんだろうか。
それとも、もっと別の理由で……?
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