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冬休み編『第28話』
(……ったく、タイミング悪いなあ……)
仕方がないので、LINEのメッセージに「仕事終わったら電話ください」と打っておいた。
化膿止めの抗生剤を飲み、額のガーゼを取り換えて、夏樹は自分の机に座った。
このところずっと河口に呼び出されていたので、冬休みの課題が全く終わっていなかった。先生から電話がかかってくるまで、できるところまで進めておこう。
そう思って問題集に取り掛かったのだが、肝心のスマホはなかなか鳴らなかった。
気付いたら課題に出されていた部分は終わってしまって、時刻も午後七時を過ぎていた。
(あの変態教師、一体何してるんだ?)
念のため、LINEのメッセージを確認してみる。が、自分が送ったはずのメッセージは未だに既読がついていなかった。
「えっ……?」
おかしい。市川は返事に関してはかなりマメなタイプだ。こんなに長時間メッセージを放置するなんてことはまずない。仕事中だったとしても、トイレに行くフリをしてこまめにスマホをチェックしている。五時間以上もスマホを見ていないなどあり得ない。
胸騒ぎがして、夏樹はLINEの電話を鳴らした。普通の音声通話も何度か鳴らしてみた。
だが数コールの後には必ず通話がプチッと切れてしまって、留守番電話にメッセージを残すこともできなかった。
「先生……?」
一体どういうことだろう。
LINEのメッセージも読まれない、電話も繋がらない、向こうからも一切連絡がない。夏休みの時もこんな感じで音信不通になったけど、あの時とは前後の状況が違う分、余計不安になってしまう。
(どうしよう……)
年末だから忙しいんだろうか。今日はたまたま繋がらなかっただけなんだろうか。明日電話したら出てくれるだろうか。
いや、でも万が一何か事件にでも巻き込まれてたりしたら……。
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