147 / 282

冬休み編『第34話』

 さて、どの先生に話を聞くのが一番手っ取り早いか……と考えた時、パッと思いついたのが保健室の藤枝先生だった。  確か彼は市川とも懇意にしており、夏樹とつき合っていることもなんとなく察していたみたいだった。  藤枝先生なら、実家の場所を教えてくれるに違いない。 「藤枝先生、いますか?」  夏樹は早速保健室に入り、藤枝先生に詰め寄った。 「先生、教えてください。市川先生の実家ってどこにあるんですか?」 「笹野くん? いきなりどうしたんだい?」 「どうもこうもありません。とにかく市川先生の実家の住所を教えてください。次の土日で行ってきますから」 「ええと……とにかく一端落ち着こうか。何があったのか説明してくれるかな」  仕方なく夏樹は、簡単に経緯を説明した。  藤枝先生はある程度事情を察してくれているようだったが、全てを洗いざらい打ち明ける勇気はさすがに出なかった。  なので「市川と話をつけに行く」という理由ではなく「借りっぱなしの大事な道具を返しに行く」という理由にすり替えておいた。 「なるほどね。それで市川先生の実家に……」  藤枝先生は顎に手を当てて唸った。 「僕も正確な住所を知っているわけじゃないんだ。ただ、市川先生は京都出身だってことは聞いたことあるな。なんかご実家はお茶やってる家みたいで、いろいろしきたりがあるらしくて……」 「わかりました! ありがとうございます!」 「あっ……笹野くん!?」  そこまでわかっていれば、あとはなんとかなる。夏樹は保健室を飛び出し、スマホをいじりながら帰路についた。  こうなったら、何が何でも実家の場所を探し出してやる! 待ってろ、変態教師!

ともだちにシェアしよう!