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春休み編『第3話』

 翔太が諭すように言う。 「気が急くのはわかるけどさ、せっかくなら春休みに入ってからにしたら? 学年末テスト失敗すると、大学受験にも響くかもしれないし……ホラ、『二年生の三学期は三年生の〇学期です』って言うじゃない?」 「それはそうだけど……」 「それに春休みに行けば、しばらく先生のところでゆっくりできるよ。一泊二日で帰ってくるより、その方がいいでしょ?」 「……まあ、そうかも」  翔太の言うことは正論だ。後先考えずに行動するとロクなことにならない。変態教師のことは気がかりだが、高校生である以上、テスト勉強も重要だ。 (住所は突き止めたわけだしな……)  夏樹は念のために家元の住所をメモって、スマホをしまった。 「わかったよ。じゃあ春休みに入ったらすぐに京都に行く。それまでにお小遣い貯めておかないと」 「それがいいよ。あ、ついでに僕もついて行っていい?」 「……え? 翔太も?」 「だって興味あるじゃない? 先生の実家がどんなお家なのか。いろいろ資料になりそうなものもあるだろうしさ~。……あ、大丈夫だよ? なっちゃんの邪魔はしないから。先生としっかり話をつけて、イチャラブになって帰ろうね」 「ちょっ……! 別に俺、先生とイチャラブになんて……」  しっかり話をしたいというのは本当だし、少しくらいならイチャイチャしたい気もするが、他人にからかわれると妙に恥ずかしい。 (俺一人で京都行った方がよくないかな……?)  そう思ったものの、「真田」を思い出す手掛かりをくれたのは翔太だから、無下に断ることもできない。  しょうがないなぁ……と思いつつ、夏樹は春休みまで勉強に勤しむことにした。

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