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春休み編『第4話』

 そして春休み。夏樹は早速新幹線に乗って京都に向かった。  最初は気持ちばかりが急いていたのだが、名古屋を過ぎた辺りからだんだん緊張して手に汗が滲んできた。  なんでこんなにドキドキしているんだろう。あの変態教師をぶん殴りに行くだけなのに。 「いや~、新幹線に乗ったのは久しぶりだな~」  一方の翔太は完全に遠足気分でいるようだった。京都に修学旅行に出かける中高生みたいにはしゃいで、持ってきたお菓子を食い荒らしている。 「なっちゃん。後で『鉤善義房』行かない? あそこのくずきり美味しいんだよね~」 「あの……俺、先生に会いに行くんだけど……」 「だから、ついでに京都も観光しようよー。全部先生に奢ってもらって」 「はあ……。翔太は気楽でいいなぁ……」 「なっちゃんだって、緊張することないじゃない? 悪い事してないんだし、一方的に『別れてくれ』って言ったのは先生なんでしょ? 何も気負うことはないよ」  言われてみればその通りだ。夏樹はこれといって責められるようなことはしていない。  そもそも夏樹は、まだ別れたとは認識していないのだ。勝手に姿を消して連絡が取れなくなった恋人を咎めに行くだけ。それだけのことだ。何も緊張することはない。 「……そうだな。翔太、ありがとう」 「うん、なっちゃんは堂々としていればいいと思うよ。ところで、キャラメル食べる?」 「いや……それはいらない……」  余計なことを考えないよう、夏樹は京都につくまで読書で時間を潰すことにした。  先生、今からそっちに行きますからね。首を洗って待っていてくださいよ!

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