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春休み編『第14話*』

 あまり長いものではなかったが、今までしてきたキスの中で一番苦かった。これは多分、抹茶の苦味だけではないような気がする。 「……先生は何もわかってないです」  涙をこらえながら、夏樹は一言一言並べるようにして言った。 「もう別れれば済む問題じゃないんですよ。俺、先生とつき合うことになって初めて男性を知りました。男性に抱かれることがどういうことか、身をもって経験しました。初めてヤられた時はしばらく後ろの違和感に悩まされましたけど、それが消えてなくなると、今度はどうしようもない疼きに苛まれる。また挿れて欲しくてたまらなくなるんです」 「……え? あ、おい!」  市川を押し倒し、その上に馬乗りになる。  もうなりふり構っていられなかった。  和服の前身頃を掻き分け、市川のモノを取り出し、手で芯を作ってやる。 「ちょ、夏樹……よせって……」 「何言ってるんですか。全部先生が教えたことでしょ」 「いや、まあそうなんだけどさ……」 「ここの敷居を跨いだ時点で、俺はとっくに覚悟を決めてるんです。だから先生も、いい加減腹括ってください」  そう言って夏樹は、下着ごと自分のズボンをずり下げ、尻だけ露出させた。  そして挑発するように市川を睨みながら、勃起した男根を掴み、ゆっくりと腰を落としていった。 「はっ、あ……あぁあ……っ!」  何の準備もしていなかったのに、夏樹の後孔はほとんど抵抗なく肉棒を飲み込んだ。数ヶ月間触れられていなかったが、身体はしっかり市川を覚えているようだった。  挿入された途端、内襞が市川のモノに纏わりつき、嬉しそうにきゅうっと収縮する。 「あっ、はぁ……あ、ふ……っ」 「っ……夏樹、やめろって……今こんなことしたら俺も……」 「嫌です……っ!」  市川の制止を無視し、夏樹は彼の腹筋に手をついて自分で腰を動かした。

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