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春休み編『第24話』
その後、お互いの精根が尽き果てるまでたっぷり愛し合った。何時間経ったのかわからないが、事が済んだ頃には障子から西日が射し込んでいた。
「……で? どうするんですか、この身体」
と、夏樹は膝を合わせた格好で市川を見上げた。
既に身体は汗や唾液、精液等でべたべたに汚れてしまっていて、とてもじゃないが服は着られない状態だ。
かと言ってここは離れだから、シャワーなどという便利なものはついていない。一体どうやって母屋に帰ればいいのか、考えあぐねているところだ。
(いくら久しぶりだからって、後先考えずにやりすぎたな……)
これは自分もちょっと反省しなければならない。
冷静に考えたら、ここは初めて来た他人様のお宅なのだ。そんなところで獣のように盛ってしまった自分が恥ずかしい。もう少し場所を考えるべきだった。
ホントにどうしよう……と悩んでいると、市川が離れに備え付けられている内線を取り、
「あー、俺だけど。ちょっと茶室汚しちゃったから、タライに水入れて大きめのタオルを何枚か持って来てくれる? 水はたっぷりめで頼むよ」
と、どこかに連絡していた。
「……誰に連絡したんですか?」
「ん? うちに出入りしてるお手伝いさんだよ。大丈夫、俺に任せとけって」
「はあ……」
仕方なく裸のまま部屋の隅で縮こまっていたら、数分でお手伝いさんと思しき人が茶室の外にやってきた。
市川はにじり口から顔だけ出して、外のお手伝いさんに声をかけた。
「あ、サンキュー。後は俺がやっとくから、道具はそこ置いといて」
お手伝いさんの足音が遠ざかってから、市川はタライとタオルを茶室に取り込んだ。タライは罰ゲームで上から落ちてくるような銀色のタライではなく、昔ながらの洗濯ダライのようだった。
市川はお釜に沸いていたお湯をタライに開け、水と合わせて温度を調節した。そこに清潔なタオルを浸し、固く絞って渡してくる。
「ほらよ。これで身体拭け」
「あ……ありがとうございます」
夏樹はホカホカの濡れタオルを受け取り、全身を丹念に拭き取った。
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