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春休み編『第26話』

「おう、祐介。長いこと待たせて悪かったな」 「いや、いいよ。翔太くんとお話できて、僕も楽しかった」  次に祐介はシミになった畳に目をやり、少し眉を顰めた。 「……それにしても随分と派手にやらかしたね。これはもう畳を総とっかえしないとダメだよ、健介」 「あー……悪い。その分の費用はちゃんと出すからさ」 「そうしてくれ。さすがにこのままじゃ、父上に雷落とされる」 (う……)  夏樹は彼らから目を反らし、部屋の隅で顔を覆った。 (あああ……穴があったら入りたい……)  頬が燃えるように熱くなっている。セックスそのものはともかく、その行為を第三者に見咎められたような居心地の悪さを覚えた。  恥ずかしすぎて、翔太や祐介を直視できない。 「まあまあ、なっちゃん。無事にイチャイチャできたんだからいいじゃない」  と、翔太にポンポンと肩を叩かれる。  あまりに恥ずかしかったのでツッコミを入れることができず、夏樹はあえて違うことを言った。 「……翔太は、今まで何してたんだ?」 「祐介さんにいろいろ案内してもらったんだよ。おかげでいっぱい資料の写真が撮れたぜ、イエーイ!」 「そ、そっか……よかったな……」 「ここのお庭さ、面白いつくばいがあるの。写真にも撮ったけど、なっちゃんも後で見てくるといいよ。先生の解説付きでさ」 「う、うん……」  ……翔太は翔太なりに楽しんでいたようだ。まあ、退屈していないなら何よりである。 「あ、いいこと思いついた」  と、市川がポンと手を打った。 「夏樹と翔太さ、祐介のお客さんってことにしてくれないかな? 俺の元生徒にするより、祐介の友人にした方が絶対いいだろうからさ」 「ああ、まあね……。それは構わないけど」 「おう、サンキュー! じゃ、そういうことで頼むわ。で、ゲストルームなんだけど……」 「それは南側の部屋が余ってるから、そっちを使えば……」  市川と祐介がこまごました話を始めたので、夏樹はそわそわしながら部屋の隅で待機した。畳のシミが視界に入らないよう、あえて何もない床の間を眺めた。

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