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体育祭編『第5話』

 夏樹も、正直に言うと、市川がこちらに来てくれた方が好都合である。LINEや通話で連絡を取り合うより、直接話した方が会話もスムーズだ。  それに……。 (いて欲しいと思った時に後ろに立っているとか、どんなヒーロー像だよ……)  そんなことされたら、ますます惚れてしまうではないか。自分ではどうしようもないくらい、先生のことが好きになってしまうではないか。  もちろん口には出さないけど……。 「いやぁ~、それにしてもちょっと懐かしいな」  と、市川が体育倉庫を見回した。 「俺が勤めてた時は、どこに何があるか見なくてもわかったけど、もしかして一度大掃除でもしたのか? ちょっと配置変わってない?」 「……いや、知りませんけど」 「ほら、この跳び箱なんてさ。前はもっと真ん中にあったのに、壁際に追いやられてる。最近使ってないのか?」  そう言われてドキッとした。  夏樹にとって跳び箱は、ある意味でとても思い出深いアイテムだ。これを見るたびに初めての時を思い出し、つい身体の芯が疼いてしまう。  あの時は跳び箱の上でさんざん犯されたけど、今日はどんなことをされるんだろう。この変態教師のことだから、体育倉庫で二人きりになっておいて何もしないとは思えない……。 「っ……」  案の定、市川に背後から抱き締められて思わず息が詰まった。 「なあ……久しぶりに跳び箱プレイやってみないか?」 「は……はあ? 何言ってるんですか。ここがどこだかわかってます?」 「いいじゃないか。たまには初心に帰ってみるのもさ」 「よくないっ! 外には部活やってる生徒もいっぱいいるんですよ! 万が一誰かにバレたら……」 「今更何言ってるんだよ。そんな環境でも、俺たちいろいろやってきたじゃないか」 「それは……」 「大丈夫だって。倉庫には内側から鍵かけてあるし、そもそもみんな部活に夢中だから、誰もここには来ないさ。俺が学校に来てることすら、誰にも気づかれなかったし」  ……なんでそういう下準備だけは、いつも完璧なんだろう。

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