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第2話

病院でバース入れ替え後の経過観察を終えた後、抑制剤を買いにコンビニに向かった。今やコンビニでも手軽に抑制剤が買える時代。 先生には不眠症やその他の疾病の原因になるため、初めての発情期が来る前から抑制剤を使うべきではないと言われているのだけど、万が一にも来てしまうことが無いようにしたい。発情期が来てしまうかもしれない恐怖こそが、俺の心を蝕む原因なのだから。 店に入って最初に目に付いたのは抑制効果がアップしたという薬。見ればそれは篠宮が経営する会社の新薬だった。 自分がΩに変えた人間が、自分の作った薬で番になることを拒絶しているなんて、彼は知らない。 それを買ってポケットにしまってから会社に向かう。 勤め先は特殊繊維を扱う地元の中小企業。そこの営業であり、支店営業課長。自分としては、βらしい仕事だなと思っている。 朝の遅刻分で溜まった仕事を片付けてから1件目の来客を終えて、あと1時間で2件目のお客様が来るなと思いながら、事務所に戻ると事務の女性に声をかけられた。 「先方、事故に遭われてしまったみたいです。案件が急ぎということもあるので今日は部下の方が代わりに来るそうです。」 驚きながら自分からも先方に電話すると、どうやら大きな事故では無かったようでけが人も居ないらしい。ただこれから警察が来て事情聴取を受けるので約束の時間には間に合わないかもしれないとのこと。そのため部下を向かわせることにしたようだ。 「瀬尾さん…か。会ったことない人だな。」 電話を終えた後に部下の人の名前を忘れないようにメモ帳の端っこに殴り書いてから篠宮に連絡を入れるべきか考える。しかし、仕事も押していたし後で一報入れておくだけにすることにした。 それから暫くして予定通り瀬尾さんが来たらしく、声をかけられたので応接室に向かう。 コンコンとノックしてから扉を開けて中に入る。 その瞬間、ブワリ、と途端に薫ってきた目眩がする程の匂いに驚きよろめいた。 「…あ…、…?」 なんだ、これは。 クラクラと、視界が霞む。目元が熱い。心臓が付いているかのようにドクドクと喉元が脈を打っていた。 「…居た…。」 耳に届いた小さな声に顔を上げると瀬尾さんと思われる若い男性が口元を抑えながら俺を見ている。 彼の声を聞いた耳までもがズクズクと疼き出して擽ったく、彼を見る俺の目は涙で滲んでいるようで視界全体がボヤッとしている。 はっきり届くのは、彼の匂いと彼の声。 「俺の番…"運命の番"…。」

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