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第18話

病院の帰り道を1人で歩く。監視の人は、少し後ろから距離を開けてついてきている。 家には、まだ帰りたくない。篠宮の待つ家。 篠宮との今までのことを思い出しながら腹に触れてみる。 ここに、この腹の中に篠宮の血を引く子供がいる。 篠宮と共に、俺を縛り付ける子供が。 歩道橋を歩きながらふと下に視線を向ける。 ここから落ちたのなら、死ねるだろうか…。 「……。」 欄干に手をかけて下を眺める。車の通りは激しくて、降りればすぐに車に轢かれることが出来る。 スピードも出ている。運が悪ければ、生き伸びてしまうだけだろう。 でも──… 「……。」 怖い。怖い。 死ぬのは怖い。でも、生きるのも怖い。 今後全てを、篠宮とこの子供に縛られ続けなければいけないのか。何故そんな目に遭わなければいけないのか。 運命の番はすぐそこに居たのに。運命はすぐそこにあったと言うのに。 訳も分からず涙が溢れて欄干の傍に蹲って泣く。 大分、長いことそうやって蹲って泣いていた。 時折通る人が声をかけてきた。それでもまだ動かないので、遂には監視の人までもが心配したように声をかけてきた。それが煩わしくなって場所を移動しようと立ち上がる。 しかし立ち上がった俺の手が後ろからグンッと引かれた。 「佐伯っ!!」 驚いて振り向くとそこにはらしくない程汗をかいて目を見開く篠宮が居た。 走ってきたことがよく分かる程息を切らせており、肩が上下している。 「篠宮!?な…。」 「佐伯っ!良かった…!!」 驚く俺はぎゅうっと力を込めて抱きしめられて、体が締め付けられるように少し痛んだ。 「篠宮…、何…!今日は忙しいから帰り遅くなるんじゃなかったの…!?」 こんな時間にこんな場所でフラフラしていて良い程、篠宮は暇な人間じゃない。 強い抵抗と共に体を離そうとするのに篠宮は更に力を強めて俺を抱きしめた。 しかしそれが腹部を圧迫する程までに強くなってきて俺は思わず焦る。 「待って!赤ちゃんが…!」 慌てた俺は、気付けばそう口にしていた。 それが聞こえたらしい篠宮はフッと力を弱めて腕を離すと俺を見る。 「赤ちゃん…?」 篠宮は、俺に問いかけるように呟いてから瞬きをした。

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