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第9話 ※

俺を番にすることに執着している篠宮。 その元を断ち切ってしまえば『運命』なんてものに踊らされて『俺を番にする運命』に固執している篠宮から解放される。 俺が誰かの番になったら、そうしたら漸くあの男の目も覚めるんだ。こんなとこに、俺たちの間に、『運命』なんてものは無かったんだと気付くんだ。 「…ヒート、また来なかったですね…。」 スリ…と横たわる俺を引き寄せるようにして腕を回した後、項に鼻筋を寄せた瀬尾くんがあからさまにトーンを落とした声で言う。 瀬尾くんとこういう関係になってから既に4ヶ月が過ぎようとしているが、番になる前に篠宮から怪しまれ監視が厳しくなってしまっては堪らないということで、篠宮と通常の生活をするために俺は今も抑制剤の服用を続けている。そのせいか発情期はまだ来ていない…。 抑制剤の服用が、今では篠宮と番になることを阻むどころか瀬尾くんと番になることまでも阻むことになるなんて…。 「…抑制剤、変えてみようかな。これじゃ効果強すぎるってことだよね?」 ベッドに立てかけるように置いたカバンに手を伸ばして、中から篠宮の経営する会社の新薬の箱を手に取って振る。まだ中に錠剤が残っていて、カラカラと音を立てたそれを恨めし気に見つめていると瀬尾くんが答えるように言った。 「…それか、1日だけ嘘吐いて俺のとこに泊まれませんか?抑制剤無しで、してみましょう?」 「えっ…、そんなこと…。」 出来ない。 けど瀬尾くんも答えは分かっていたようで振り向いた俺と視線を合わせると俺が言い切るより前に「すみません。」と言って笑った。 「けど……。」 言い淀む瀬尾くん。 俺はただ促すように黙って見つめた。 「…佐伯さん。俺もうあなたが篠宮さんに抱かれるのは嫌です…。俺があなたの肌に痕を残したい。俺が項を噛みたい。俺のものにしたい。」 瀬尾くんが目を閉じて額を俺のに寄せると懇願するようにそう言った。 瀬尾くんには無理をさせている。させ過ぎている程に。 「……分かった。篠宮に、言ってみる。」 気が進まないながらも言った俺に瀬尾くんは嬉しそうに目尻を下げて「佐伯さん…。」と言って体を起こすと俺の上に乗り上げて来て俺の腰を掴んで浮かせた。 「!?待って!瀬尾くん!ダメだよッ、もう帰らないと…!」 「1回。1回だけ。俺、まだ佐伯さんと居たい。」 脚を肩に担がれ大きな手の平で俺の下腹部を圧迫するように押される。その手の下では内壁を押し上げるように瀬尾くんの怒張が侵入してきて、奥を刺激した。 「まっ…、ぁッ…、はっ…。」 先程までの熱もまだ冷めきらない内から始まった行為に、興奮が募って快楽に対する感覚ばかりを敏感にさせていく。 必死で止める俺の言葉が聞こえないようにうわ言を言っては瀬尾くんは奥を犯した。 「んんぅっ!ゃっ!あぁ!瀬ぉ"…く…っ!」 「佐伯さん。佐伯さんっ…!ここに、もう俺以外を受け入れないで。早く俺の番になって。俺の子を産んで!」 瀬尾くんの、苦し気な願いが吐き出されては、消えていった。

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