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第14話

篠宮に閉じ込められてから2ヶ月の時が過ぎようとしていた。 人工Ωである上に初めての発情期が来る前から抑制剤をあまりに長く、しかも過剰摂取していたから発情周期が乱れてしまったのだろう。 心配した篠宮が部屋へと読んだ医者はそんなことを言っていた。誘発剤などは使うべきではなく自然に発情期が来るのを待つべきだ、とも。 俺を閉じ込めてから篠宮は俺を求めて来ないし一緒にも寝ていない。篠宮がこの部屋に居ては外から鍵をかけられないからだ。 発情期は、むしろこのまま来ないんじゃないだろうか。やはり人の手で変えたものを更に人の手で抑え込む。そんなことが、自然の法則に戻れるはずはない。 「……。」 だがしかしこのまま発情期が来なければ、俺は一生この部屋から出ることは出来ないのだろうか。 『番になったら、一緒に外に散歩に行こうね。』 今では篠宮のそんなセリフだって恋しく思えてきてしまう。 会社はどうなっているだろう。突然来なくなった俺に、酷く困惑しているに違いない。いやでも、もう篠宮が退職の手続きをしているかもしれないな。 迷惑をたくさんかけたに違いない社内の人たちを思って申し訳なくなる。 あとは…瀬尾くん。 彼はどうしているだろう。心配してくれているかな。泊まりを提案された翌日から連絡が取れなくなってしまったから、変に自分を責めていなければ良いけど…。 そう瀬尾くんの心配をするうちにやがて瀬尾くんと初めて会った時のことを思い出していく。 顔が熱くなって、瀬尾くんの匂いしか分からなくなった。あれがフェロモンというやつなのだろうか。とにかく全ての細胞が沸いた気がして、世界が瀬尾くん1色になった。 「瀬尾くん…。」 会いたい。彼にもう1度抱かれたい。あの腕の中で、1度でも良いから安心しながら寝たかった…。 そう思いを募らせていると、なんだか心臓の鼓動が大きくなっていくのを感じた…。 「?…、え?」 ドクドクと、嫌に早くなっていく鼓動。 下腹部がキュゥゥ…と切なく収縮しているのが分かる。 「ぁ…、やだ…。嫌だ…!!」 体までもが遂に俺の意志を無視しだす。 熱くなっていく顔、体。心臓がどこに付いているのか分からなくなるくらい全身が脈を打っている。 「やだ、やだやだやだ!!止まれ…!止まれよ…!!」 勝手に溢れる涙が体が流させるものなのか心が流させるものなのか分からなくなった。 発情期が、来た。

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