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第3話
その夜も、タタリの愛撫は優しかった。
甘い果実のような桃色の胸の突起を優しく摘んだかと思えばべろりと生温い舌でそれを舐めあげる。
だんだんと熱を持ち始めた下半身を優しく擦り、先走りで濡れた指先でコノエの硬く閉じた孔をゆっくりと拡げていく。
痛みを感じさせないそれにぞわぞわと背筋を震わせコノエは我慢できずに喘いだ。
タタリの名前を繰り返し呼び、それに答えるような愛撫に何度も絶頂を迎える。
自分の艶めかしい蕩けた顔に股間を大きく反応させたタタリのそれを締めあげると、小さく息を詰まらせた彼がどくんどくんと体内でさらに大きさを増した。
「はっ……タタリ、様っ……も、もっと…あうっ…」
「…淫乱だ、なっ……」
「あっ…」
ずん、と一際深く突き上げられびくんと体を震わせる。
そこは、長年続けてきたこの行為で暴かれたコノエの一番感じてしまう場所だった。
「あっ…やだ、タタリ様っ…いやっ……あうっ…」
がつがつとそこを激しく責め立てられ、あられもない声が口から漏れるのが恥ずかしくて口を手で塞ごうとするが、すぐにタタリに両腕を捉えられる。
にやりと笑う王に悔しさを覚えながら何度目かの絶頂に大きく嬌声を上げた。
ふっと微笑みを浮かべるタタリを見て、コノエはそっと意識を手放した。
遠い意識の中、コノエを探し腕が動く。
呻きながら見つからないコノエに苛立ちを覚え、少しずつ意識を覚醒させていく。
何度かその名前を呼ぶが返事がない。
暗がりの中、広い一室を何度見回してもコノエの気配がない。
舌打ちをして、侍女や大臣たちを呼び出しコノエを探させる。
現在の時刻は深夜3時。まだ眠気の取れない臣下たちは、王の探し人を懸命に探すも、中々見つけられずにいた。
真っ暗な中、闇夜を照らす月の下でタタリは苛立ちを隠すこともなく怒鳴り声を上げる。
数時間前まで機嫌のよかった王は、今はもう見る影もないくらいに怒りに満ちている。
ドスドスと音をたてコノエを探し回り、時刻は時計が一回りした頃。
不機嫌な王は金色の長い髪を漸く見つけ出し、その足を止めた。
泣き声は、ただ静かに響いた。
小さく小さく、聞こえるか否かの微妙な啜り泣きが、王の耳に酷く焼き付いた。
大きめの庭に取り付けられた噴水のフチに体を預け、水音にかき消されるその泣き声は、先程の快楽に伴う声とはまったく違っていて、声をかけることを躊躇わせた。
しばらくその様子を見守っていたタタリだが、やがて静かにイハルを呼び出すと、そっとその場を離れ去っていった。
彼なりの優しさなのだろうか。
イハルはただ静かに去っていく後ろ姿を見送って、なんとも珍しいこともあるものだと息をついた。
噴水の方を見ればまだしくしくと頬を濡らすコノエが見えて、ふう、と息を吐き出すとそっとその背中に着ていた羽織りを掛けた。
「風邪を引かれますわよ、コノエ様」
「イハルさん…」
「さ、中に入りましょう」
イハルはそっとコノエの手を握ると、微笑みながら濡れたハンカチでその顔を優しく拭いた。
その優しさに、さらに切なくなった胸が痛みを訴えて、コノエはまた静かに涙を流した。
翌朝、コノエは珍しく自室のベッドで目を覚ました。
昨晩、部屋に戻ろうと促すイハルに首を振って、タタリの寝所に向かったコノエは、椅子に腰掛け本を読むタタリと再び共に眠りについたはずだった。
何故ここで眠っていたのか分からず、ぼんやりとした頭で考えていたが、結局なにも思い出せずに、イハルを呼んだ。
「昨晩はタタリ様がコノエ様をこちらに連れてこられたのですよ」
穏やかな声でイハルは紅茶を淹れながらそう告げた。
まさかあのタタリが、と驚くコノエにそれと、今日はこのまま部屋で休んでていいそうですと笑う。
暖かい淹れたての紅茶を受け取り、コノエは槍でも降るのだろうかと考えてイハルと同じようにくすりと笑った。
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