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第3話
予想通り、闘技場には学校のほぼ半数以上の生徒が見物しに来ていた。
周りは俺とサトウユウジ。どちらが勝つかを賭けあっているらしいが……賭けをする必要もないだろう。
「勝つのはこの俺なのだから」
「では始めましょうか。ブラッド・レンフォート様」
「おい待て。その前に契約だ」
「あぁそうでしたね。えっと……それで契約とは、一体どうすればいいのですか?」
「はぁ?そんなことも知らんのか?全く……本当に魔術師か?貴様は」
「?」
俺の嫌味に全く怒る様子もなく首を傾げたままのサトウユウジに、思わずこっちまで調子が狂って、コホンと咳ばらいをして空気を切り替える。
そういえばこの男。ここに来た時から表情が変わらない。基本ずっとニコニコしている。俺の嫌味にも苛立ちすら見せないし、こんな状況でも不安や焦りすらない。
気持ち悪い。
全く読めない男だ。
「それで、どうすればいいのですか?」
「あ?あぁ、まず互いになにを『賭ける』か言葉にしろ。そうすれば身体の中に流れる魔力が胸に刻印を残す。それで契約成立だ」
「それだけで契約が成立するのですか?」
「あぁ勿論。もしも契約を破れば胸に刻まれた刻印が心臓を潰すようにできている。だから絶対に契約を破ることはできない」
「成程ですね」
このくらいの知識、同じ魔術師なら誰もが知って良そうなことだが……。
「因みに賭けるものは、相手と同等の価値があるものでないといけない。だから俺は『俺自身』を賭けることにしよう。俺が負ければ貴様は俺を好きにできる。どうだ?悪い話ではなかろう?」
俺の言葉に反応した魔力が全身を駆け巡り。胸に一瞬の痛みが走る。
「いいのですか?」
「あぁ勿論。この俺が負けるなんてありえんからな」
寧ろ俺は、今までこのやり方で勝負に勝ち。ここの家畜共を俺の手駒にしてきたのだ。この男もその一人にしてやる。
「では僕も『僕自身』を賭けないとですね。お手柔らかにお願いします」
これで『契約』は成立した。
「はっ。お手柔らかにだと?それは俺の気分次第だ」
「では、始めます」
審判のコインが投げられ、俺は魔力を右手に込める。
金色のコインは宙でくるくると回転し、そして地面へ落ちた。
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