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第5話

「ッ……認めるものか。貴様の様な男にこの俺が魔術で負けるわけがない!!!!」 俺はサトウユウジの胸倉をつかみ、そのまま床へ押し倒して、首を絞め上げる。 「ハハハッ!!どうだぁ?魔術が使えんだろ?俺の右手には、相手の魔力を吸い取るブレスレットがはめられている。いくら貴様が強かろうと、結局魔術が使えない人間は一般人となんら変わらん。アハハハッ!!このまま死ねぇえ!!」 徐々に首を絞める手を強めていく。 観客からは「そんなの反則だ!!」「卑怯者!!」とブーイングが飛び交っているが、弱者の言葉など知ったことではない。 この男には、どんなことをしてでも後悔させてやらなければならない。この俺、ブラッド・レンフォートをコケにしたことを。 「そんなもの使ったところで、僕は殺せませんよ」 「……は?」 全く苦しむ様子を見せないサトウユウジ。それどころか、ずっと俺を見ながら微笑んでくる。 これだけやっても、コイツは顔色一つ変えない。 最初はその表情に腹立たしさを感じていたが、今は恐怖を感じる。 「何故……何故ッ何故ッ何故ッ!!!!何故だァア!!!!」 途端、腹部に衝撃が走った。 まるで大きな鉄球にでもぶつかったかのように俺の身体は上へ吹っ飛び、そのまま地面に背中を強打させた。 「ァ……ガッ……」 息が上手く吸えない。声が出ない。痛い。苦しい。 「その痛みは、貴方が今まで他の人達にしてきたものに比べれば大したことありませんよ。そのことを覚えておいてください。ブラッド・レンフォート様」 そう言ってただ一人立ち上がったサトウユウジに、沢山の歓声が上がった。 まるで敵を倒した正義のヒーローのような男の眩しい背中を最後に、俺はそのまま意識を失った。

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