「『顔を隠しちゃ駄目』ですよ。プライドが崩されて泣きそうになってる貴方の素敵なお顔が見れないじゃないですか」 元より腕は動かないのに、さらに命令を下されたことで、さらにビクとも動かなくなり。縄に縛られているどころか、強い物に抑え付けられているようで恐怖さえ感じる。 「怖いですか？」 「ッ……ヒッ！！ぅあッ」 サトウユウジの指が、反り立った俺の性器を下から上へゆっくりなぞっていると、急に先っぽを指でピンッと弾いてきて、思わず声が漏れてしまった。 「ふっ。可愛い」 俺の反応に興奮が増したサトウユウジの目元は赤く火照り、楽し気な笑みを浮かべている。 遊ばれている。 そう頭では分かっているのに……今まで味わった事のない刺激を少しずつ与えられ、俺の身体はもどかしくなっていく。 ーーーーイきたい。 ーーーーイかせてほしい。 でも、サトウユウジの手は俺の気持ちを高ぶらせるばかりで、しっかりとは触ってはくれない。 「ッーーふっ、ぅっ」 「あれ？もうイきたいですか？」 我慢汁でとろとろになっていた俺の性器を見ながら、サトウユウジは意地悪な質問を繰り返す。 「イきたいですか？」 「っ……イ……」 「イかせてほしいですか？」 「ぅ……」 イきたい。イかせてほしい。 でもそんなこと、この俺の口で言うなんて……そんなのーー。 「ヒッ！！」 再び胸の突起を指で弄られ、ビクビクと反応してしまう腰が自然と浮いてしまう。 「体は素直ですが、僕は貴方の口から聞きたいです。ほら……言ってください。イかせてって」 今にも達してしまいそうな俺の性器を優しく包むと、サトウユウジの手は根元から先までゆっくりゆっくりと壊れ物のように撫でていく。 こんなのじゃイけない。 もっと、もっと擦ってほしい。痛くても構わないから、早くその手で俺をーー。 「イ……イか、せてくれ。サトウ……ユウジィ……」 「……あぁ……最高」 瞬間。俺の性器を包んでいた手が先ほどより強めに握られ、上下に擦られる。 「うぁあッ！！そ、それッ……はっ、あぁ！！」 電流が流れたような刺激が一気に走り、動かない身体を必死にバタつかせてしまう。 「気持ちいいですか？」 だんだんろれつも回らなくなってきて、気付けば俺の口の横からはしたないほど唾液が零れ、頬は涙で汚れていた。 「もうっ……イっ、く」 ぞくぞくと背筋が震え、下半身が一気に熱くなる。 その瞬間、サトウユウジの親指が俺の性器の先っぽをグリッと押し込み。俺はその刺激に耐え切れず、自分のものとは思えない女の様な甘い声が、小さな悲鳴を上げた。 「おやおや、いっぱい出しましたね。そんなに僕の手が気持ちよかったのですか？」 「はぁ……はぁ……」 まるで酒に酔った時の様にクラクラする。 普段女とする時は、こんなに気持ちよかっただろうか？ 「あの、大丈夫です？」 「うっ……むりっ……」 「まさか触っただけでこんなに伸びてしまうなんて予想外でした。本当はもっと続きをしたかったのですが……」 「……なっ」 何をする気だったんだ！！と怒鳴ってやりたかったが、声が上手く出ないのと、その答えを聞いてはいけない気がして口をつぐむ。 「ねぇ、いいですか？シても」 「うっ…」 無理無理無理！！ 魔力切れで体力がないのもあるが、もうなんか色々と疲れて無理だ。 それにこれ以上続けるのはまずい。取り返しがつかなくなると、声が出ないかわりに目で訴えてみる。 「……しょうがないですね」 あれ？意外とあっさりと諦めてくれたな。 命令で無理矢理も出来たというのに……いや俺は助かったが。 「では『続きはまた今度』……ですからね。け・い・や・く。ですから」 「なっ！？」 「当たり前です。僕は貴方と最後までシたいのですから」 ちゅ。と軽くキスをして、サトウユウジはベットから降りた。 「ではまた明日お会いしましょう。ブラッド様」 バタンとドアが閉まる音を確認して、俺はやっと軽くなった腕で毛布を頭までかぶる。 最後のキスをされてから、胸がずっとドクドク煩い。顔にも熱が集まっている。 なんだこれは？ 羞恥心か？怒りか？悔しさか？ この俺を上から見下ろしてくるサトウユウジの目、そしてあの意地悪な微笑み。醜い俺を映す真っ黒な瞳。 そうだ。あの態度が気に食わないのだ。 これは怒り。怒りの感情だ。 しかし、俺を欲しがるあの手つき。あの口付けは、別に嫌な気は……。 「いやいや何を考えている！！早く。早くこの状況をなんとかしなければ……」 そう。まず俺がやるべきことは一つだ。 ーー奴と結ばれた契約を切る。 その目標を胸に刻み、俺は重たい瞼を静かに閉じた。