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第9話
サトウユウジとの一件から一週間の月日が経ったが、俺の学校生活は最悪なものへと化してした。
「アイツさ、よく毎日学校に来れるよな。俺なら絶対無理」
「私的には、毎日レンフォート様の惨めなお姿が見られるから有難いけどねぇ~~」
「そうそう。今まで私達を馬鹿にしてきた罰よ」
「ユウジにはマジ感謝だよなぁ~~。俺もおかげでパシられなくなったし」
「実はレンフォート家って大したことないんじゃね?アハハ!!」
教室の隅でただ一人、席に座って次の授業が始まるまで窓を眺めている俺を、家畜共は後ろ指を指しながらケラケラと嘲笑う。
はらわたが煮えくり返す思いだ。
大体、俺が負けたのはサトウユウジであって貴様等家畜共ではない。俺よりも雑魚のお前らがこの俺を馬鹿にするな。
「チッ。ここにいる全員、今すぐ消し炭にしてやろうか」
激しい怒りで、魔力が勝手に体の中で暴れ出す。
今の俺なら、一瞬でここにいる奴等全員消すことができるだろう。
だが、それはアイツに止められる。
「『彼らに手を出すのは駄目』ですよ。レンフォート様」
奴の命令に反応して、胸に痛みが走る。
怒りで暴れていた魔力も、今は落ち着きを取り戻していた。
「チッ。サトウユウジ。貴様またこの俺の邪魔を」
「何を言ってるんだ!!ユウジはお前がまた皆を虐めないか見張ってくれているんだぞ!!少しは負けを認めて、これ以上皆を魔術で支配するのは止めろ!!ブラッド・レンフォート」
いつのまに仲良くなったのか、この俺にいつも生意気な態度を取っていた家畜のルイス・アルベルトが、サトウユウジの隣で偉そうに戯言をほざいている。
その隣では、胸だけが取り柄のカトレア・ローレンスが、不安そうな目で二人と俺を交互に見ながらオロオロしている。
俺より強い奴と一緒にいれば、何を言っても安全だと思っているのだろうか?この家畜は。
あぁ腹立たしい。
胸糞悪い。
どいつもこいつも、この俺が何も出来ないことをいいことに言いたい放題言いやがって。
「覚えていろよ家畜。貴様等だけは絶対に許さん」
殺意を込めた俺の言葉に、家畜と女は口をつぐみ冷や汗を流すが。相変わらずサトウユウジだけはニコニコと微笑んでいる。
ここ一週間ずっと奴を見てきたが、未だにこの男が何を考えているのか全く読めないでいる。
最初は家畜共と同じように俺を懲らしめたいだけかと思っていた。
だがそれだけで、男の俺を犯そうと思えるだろうか?いや、結局最後まではしていないのだが……。だがそれでも、アイツは俺のを触って、ちゃんと興奮していた。
俺みたいなプライドの高い奴を虐めるのが好きだからあんなことをしたのだろうか?
それともただの性欲処理か?
まさか、俺以外の奴にもあんなことをしてるのでは?
「ブラッド様」
「っ!!」
あの日と同じ甘い声が、耳元で囁かれて、少し肩が震えた。
「なっ、なんだ……」
顔を向けると、家畜二人の姿はなく。サトウユウジだけがまだ俺の前に立っており。あの日と同じ、意地悪な笑みを向けていた。
「考え事をしていたようですけど……もしかして、あの日の事を思い出していました?」
「なっ!!……そ、そんなはず」
だが、奴の真っ黒な瞳に映る俺の顔は、隠しようがないほど動揺と羞恥心で歪んでいた。
「その顔、とてもそそりますね……今すぐにでも犯したい気分です」
「ばっ!!き、貴様、こんな場所でそんなこと……」
「僕はバレてしまっても全然いいんですけどねぇ……」
「な、何を馬鹿なこと……」
「まぁでも、貴方のその顔は誰にも見せたくありませんし。しょうがないので、ここではなるべくいつもの僕で接しますよ」
意地悪な笑みが再び、嘘くさい微笑みへと戻る。
「っ……貴様は一体、何を考えているんだ」
「なにって、貴方のことばかり考えていますよ」
「……臭い台詞ばかり言いやがって」
綺麗な瞳から目が離せない。
甘い男の声だけが、耳から離れない。
ミステリアスな男はモテる。とよく言うが、その理由が今なんとなく分かった気がする。
「授業を始めるぞ。席につけーー」
講師の声に、ハッと我に返る。
俺は今、何を考えていた?
この男が魅力的……みたいな、馬鹿なことを考えていなかったか?
「では、授業が始まりますので行きますね。レンフォート様」
「……さ、さっさと行け!!」
「あ、そうそう。『今日の夜十二時、僕の部屋に来て』くださいね。待っています」
「はぁ!?」
「では」
最後に頭をペコリと下げて、自分の席へと戻っていくサトウユウジ。
その間に胸元をこっそり覗くと、案の定刻印が浮き出てしまっていた。
「くそっ……早くなんとかしなければ」
今夜にでも俺は、犯されてしまう。
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