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第17話
「んんっ……んぁ?」
朝日が目に差し込み、自然と瞼を開ける。
ふかふかのベット、ふわぁっと香る心地いい匂い。
だが、どこか窮屈……。
「おはようございます。ブラッド」
「……あ?」
朝日と同じ……いや、それ以上に眩しい笑顔が俺の目の前で寝ていた。
そこで俺は、昨日の出来事をようやく思い出す。
あぁそうだ。そうだった。
俺はコイツと、セックスしたんだった。
「イッ!!つ……」
この腰の痛みも、体のあちこちにある赤い痕もその証拠だ。
というか、女役ってこんなに体力持っていかれるものなのか……。正直今日一日動ける気がしないんだが。
「あ、今さぼろうとか考えてませんでした?駄目ですよ?ちゃんと授業を受けてくださいね?」
「はぁ?こっちは貴様のせいで身体がボロボロなんだぞ」
「だからこそですよ。痛い腰と服の下にあるキスマークを隠しながら、授業中僕とのセックスを思い出して恥ずかしがるブラッドを見ていたいのです!!」
「キモイ」
「酷い!!」
「というか、気安く「ブラッド」と呼ぶな」
「昨日「様はいらない」と言ってくださったのはブラッドですよ?」
「あ、あれは!!…………チッ。仕方ない。だが、他の奴等の前でその呼び方はするなよ。いいな?」
「成程。恥ずかしいのですね」
「黙れ」
「全く。これではどちらが契約で縛っているのかわかりませんね」
なんて文句を言いながらも、俺の頭を撫でて満足げに微笑むユウジに、思わず顔に熱がこもる。
「あ、また布団を被ったら起きないでしょう?」
「う、煩い!!俺は後から向かう。貴様は先に行け」
「そうですか……折角なら一緒に登校したかったのですが。しょうがないですね」
少し残念そうな声で布団から出ていくユウジは、テキパキと支度を済ませると、いつもの笑みを作って「行ってきます」と先に学校へと向かった。
バタン。と扉が閉まると訪れる静かな空間。
その中で、ずっと聞こえてくる俺の大きな心音。
頭を撫でられただけでこの始末とは……。
「重傷だ」
まるで乙女の様な自分の反応に嫌気がさしながら布団をはぎ、目を覚まさせるように冷水で顔を洗う。
「しまった。ワックスがない」
鏡の前で前髪を下ろした自分は、未だにどこか浮かれている。夢心地の様な目をしている。
「クソッ。髪はしょうがないが、せめて顔つきくらいは戻せ。俺」
そう俺は、レンフォート家の最強魔術師。
弱者を踏みつぶし、女も金も地位も全て手に入れる。
そんな俺が、あんな男に身体と心を許すなんてあってはならない。
「よし。いける」
両手で自分の頬を叩き、気合を入れる。
髪型だけは諦めて準備を終わらせると、テーブルにはいつのまにか用意されていた朝食のパンが置かれていた。
ユウジが前もって用意をしてくれていたのだろう。
普段朝食はあまりとらないが、折角用意しているのなら仕方ない。
意外とふんわりしていて、甘みのあるパンを一口齧り、俺は学校へと向かった。
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