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第20話

「はぁ。これでは一向に話が進まないね」 「そうですね。僕も意見を変える気はありませんので」 「ふむ……ではこうしよう。ブラッドを賭けて、私と君とで勝負だ」 「な!?」 つまりそれは、俺とユウジが一度おこなった、何かを賭けた魔術師同士の一対一の勝負。 しかも、俺を賭けてって……。 「いいですよ」 「ちょっと待て。馬鹿な事を言うな。兄上様は俺よりも優秀な魔術師だ。いくら貴様でも勝てる相手では」 「大丈夫」 俺の話を遮って、ただ一言そう言ったユウジの目は本気だった。 きっと俺が何を言っても、この勝負を下りる気はないだろう。 「では三日後。場所の方も私が指定していいかな?」 「どうぞ」 「では、場所が決まったらすぐに連絡するよ。それまでブラッドと、最後の思い出作りでもしておくといい」 「そうですね。これからの学校生活は、ブラッドと沢山思い出を作っていくつもりなので。邪魔はさせません」 いつもの作り笑顔は完全にはがれ、純粋な怒りを露にしたままのユウジの姿に、兄上様は軽く鼻を鳴らす。 しかしなんだ、この違和感は。 兄上様にしてはどこか感情的と言うか、考えなしと言うか……。 普段の兄上様は俺とは正反対で、どんな時でも冷静で先の事を考えてから慎重に行動するタイプだ。 だから、今日の様に相手の力量も知らないまま勝負に持ち込むことなんて事は、一度たりともしたことがない。 「何を考えているんだ。ブレイク兄様は」 「心配しなくても大丈夫ですよ。僕が貴方を守りますから」 「いや貴様も貴様だ!!一体何を考えている!!」 「何も。ただ思った事を口にしたまでです」 「っ……馬鹿が。何故貴様がそこまでするんだ」 「その理由は前からお伝えしていますよ」 「うっ……」 「ブラッドこそ、僕に言う事あるのではないのですか?」 期待の眼差しを向け、ただ俺の返事を待つ静かな時間に足がすくむ。 奴が何に期待して待っているのか、流石の俺でも分かる。 だが……。 「は?貴様に言う事だと?そんなもの…………なにもない」 数秒の間、空気が重く静まり返る。 あまりの居心地の悪さに、恐る恐るユウジの方へ目を向けると、奴の顔はどこか悲しげだった。 「何をそんな悲しい顔を……って、オイッ!!」 今にも泣きだしそうになる顔を我慢したまま、ユウジは突然俺の腕を掴むと、そのまま早足で歩き出す。 「何処へ行く!!」 俺の問いにも答えないまま連れて来られた場所は、ユウジの部屋だった。 だが、まだ授業は終わっていない。 「オイ、いいのか?貴様がサボりなどして」 「授業なんてどうでもいい。それよりも」 「オワッ!?」 掴んだままだった腕をいきなり引っ張り、その勢いのまま今度は胸を押され、バランスを崩した俺の身体はそのままベットへ倒れ込む。 もしかして、この展開はーー。 「今は、貴方を滅茶苦茶にしたい」 やはり、そういう展開だった。

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